今日は参考人質問。さすがに前回のように爆笑とはいかず、正直、あまり面白くなかったのだが、それでも気になった点をピックアップしてみる。音楽関係で参考人として呼ばれたのは、依田巽氏(RIAJ会長、avex会長)、高橋健太郎氏(音楽評論家)、ポール・デゼルスキー氏(HMV日本と香港の偉い人)
ちなみに、発言を書き起こしているわけではないので、細かい表現、言い回しは実際とは異なっています。
まずは、各参考人の冒頭の意見陳述
依田巽氏:今までの意見の繰り返し。
詳しく知りたいという酔狂な方は
RIAJのページへどうぞ。
高橋健太郎氏:アーティストやファンの間から、強い反対の声があがっている。
レコード業界vsアーティスト&リスナーという構図になりつつある。
著作権法は著作権者を守る法律である。
今回の法案は、著作隣接権者(レコード会社)の権利を強める、市場コントロールの権利を強めるだけのものだ。
還流CD防止の必要性は理解できる。しかし、副作用が大きすぎる。
二重に保護をしたところで、魅力がなければ、リスナーにそっぽを向かれる。
小売店の間では、これが不買運動へと発展するのではないかとの危惧も広がっている。
また、条文が曖昧あるがゆえに、いちいち裁判が必要なのでは、輸入業者も、アーティストも判断できない。
また、非差別的な条文の法律を、差別的に運用するというが、諸外国から抗議されたらどうするのか。
また、5メジャー以外の著作権者が権利を行使したら、それはすぐに広がる。5メジャーも追随しないとは、いえない。
一度廃案にして、よりアーティストを大事にする目的の、より広範にヒアリングを行い、より慎重に議論を重ねた法律にするべき。
ポール・デゼルスキー氏:還流CDの問題はわかるし、規制の必要性も理解できる。しかし、今の条文では問題があるのは、先日の審議(5月28日の文部科学委員会)でも明らかだ。
HMVでは、各方面と協議を繰り返し、輸入盤には影響しないという言質はいただいたし、それは評価するが、それらの言質には拘束力がないのも明らかである。
100%の
「法的担保」がないと、不安は払拭されない。
(ここでプリンスとノラ・ジョーンズのCDを実際に手にとって、国内盤と輸入盤のあいだに、それぞれ
33%と
35%の価格差があることを示す)
質問答弁書でも回答はされているが、これらは不当な利益の侵害にならないという明確な担保をいただきたい。
また、将来的に、利益を求めて権利が乱用されるのではないかという懸念も持っている。
将来的に依田氏がコントロールしきれなくなるのではないかという懸念である。
実用面だが、香港では毎月数千のタイトルが発売されるが、これらをひとつひとつチェックするのは困難だ。結果的に香港の音楽市場は大きな影響を被り、
香港の消費者の選択肢は確実に狭まった。
また、
オーストラリアでは逆に輸入規制が撤廃されたが、海賊盤が市場に横行したり、還流CDが市場に氾濫するような事態にはならず、
音楽市場は活性化された。
この法案は実用面が非常に曖昧である。
また、税関でチェックする際に、
商品が税関に滞留することによるデメリットも大きい。
是非、還流CD以外の輸入盤は大丈夫であるとの
100%の法的担保をいただくと共に、実用面を明確にしていただきたい。
次に、各議員の質問。
自民党伊藤議員の質問
Q:ASCAPにも同意を得ているのか?
A(依田氏):得ていないが、ASCAPも同意する
「はず」民主党川内議員の質問
Q:この法案が成立したら、どのような影響が出ると思われるか
A(高橋氏):リスナーが触れる音楽が狭まり、音楽文化に影響が出る。
また、法案には「最大
7年の輸入禁止」とあるが、同じような法律を成立させた
香港でも18ヶ月。
国内盤は、1年前後で生産中止となるケースがとても多い。
ということは、
最大で6年間、日本のリスナーはその音源を入手できず、これは著作権者の不利益につながる。
生産中止の段階で関係各所に通告して輸入禁止を解除させるよう、義務付けるべき。
A(依田氏):7年というのは、作品の平均的なライフサイクルから算出した。
実は、
私は当初、輸入禁止期間50年を希望していた(!!!!)。
また、
香港やオーストラリア(香港とは逆に、輸入規制が緩和された)は、音源の輸入国であり、生産国ではない。今回とは別のケースだ(←カイリー・ミノーグとか、サベージ・ガーデンが怒るぞ・笑)
Q:現状では日本も音源の輸出国とは言いがたく、香港やオーストラリアと同じ状況だと認識しているから質問している。依田氏がレコード協会会長を退いた後も輸入盤が不当に規制されないといえるのか?
A(依田氏):RIAJの理事の総意をもっていっているのであり、RIAJが存続する限り大丈夫。
Q:聞いたことに答えていただきたい。米国5メジャーからは、いつ、どんな人から、どこで、どんな風に言質をとったのか。また、文書等はあるのか。
A(依田氏):5メジャーは「それは日本の問題だから日本にまかせる」といっている。RIAJ理事には、5メジャーの日本法人も入っている。RIAJは輸入盤を規制しない。
Q:確認するが5メジャー一社一社に確認はとっていないということでよいか。
A(依田氏):とっていない。Q:実際に確認していないというのは、
消費者に対して不誠実な態度だと思う。
さて、以前、依田氏は、ドンキホーテなどで1500円か、1600円程度で売られている還流CDについては問題にしないと言った。
1500円、1600円という価格レベルなら、権利は行使しないということでよろしいか。
A(依田氏):値段云々では判断しない。それが還流盤であり、利益を侵害しているかどうかで判断する。
Q:再販制と輸入権、二重の保護はいかがなものかと思う。いっそのこと、輸入権は大事だから必要だ。再販制はやめにすると言ってはどうか。
A(依田氏):両方ともまったく異なるもので大事なものだ。
川内氏:どちらも独禁法の対象外であるから、同じ「保護」である。
どんなにいい制度でも理解が得られなければいけない。
依田氏とは、今後とも長いお付き合いをお願いしたい(←議長爆笑)
社民党横光議員の質問
Q:アメリカでは1400円程度、日本のHMVでは2519円のCDがあるが、どうしてこうなるのか。
A(デゼルスキー氏):個別のケースは、今は答えることが出来ないが、その店が仕入れた量で運送コストは大きく異なる。アメリカ国内で流通する分では、その影響はさほどではない。
Q:Amazon.co,jpでは、アメリカとほぼ同じ価格で売られているのだが…
依田氏に聞きたい。依田氏の努力は直輸入盤の確保に対してしかなされていないように見えるが、並行輸入はどうなるのか。
A(依田氏):理屈の上では並行輸入がとまるというのはありえるが、実際上、そんな手間なことは出来ないから安心汁。
Q:並行輸入も大丈夫なのね?
A(依田氏):そのように理解している。
Q:仮に並行輸入が止まったらどのように対応するか。
A(依田氏):各所と協議して決めなければならない。
まだ決めていない。
Q:高橋氏から厳しい指摘があったが、5メジャー以外が輸入権をこうししたらどうするのか。
A(依田氏):理屈としてはありえる。
でも、みんな出来るだけたくさん売りたいんだから、権利なんて使わねーって。
Q:100%の法的担保を求める声も多い。努力していただきたい。
高橋氏は100%の法的担保というのは、どのようなものだと考えるか。
A(高橋氏):私は法律の専門家ではない。詳しくはお答えできない。
ただ、著作権法を使って流通を変えるということ自体が、いかがなものかと思う。
非差別的な法文の法律を、差別的に運用することにも問題がある。世界が見たら、どのように受け止めるだろう。
(この直後、横光氏はいささか唐突に「終わります」と質問を終えた。乱暴。時間が押していたのかもしれないが、印象はよくない)
公明党富田議員の質問
Q:消費者団体から、洋楽レンタルが一年間禁止された例を挙げた、不安の声が届いているが。
A:世界中のレコード業界が反対し続けているレンタルと、私たちレコード業界が推進しようとしている輸入権ではケースが異なる。
Q:100%と法的担保とは、どのようなものがありえるか。
A(デゼルスキー氏):法律の専門家ではないので、詳しくはお答えできない。
HMVとしては、5メジャーの日本法人と覚書を交わそうとしたが、残念ながら、各社とも受けてはもらえなかった。このような方法もあると思う。
Q:その覚書というのは、小売店がそれぞれにレコード会社と交わすとううものか。
A(デゼルスキー氏):そう。
(
富田議員は「今国会で絶対この法案は成立させる」と明言して質問を終えた。
あくまで個人的にだが、孫の代に至るまで、我が家では公明党には投票しない)
共産党石井議員の質問
Q:資料ではアンケート19社中13社が、レコード輸入権が創設されたら、アジアで積極的に展開したいといっているが。
A(依田氏):そのとおり。
海賊盤対策をしても、なかなか成果は上がってこない。
輸入権創設で、すぐにでもアジアへ展開したいという会社が13社あるということだ。
(ちなみに、これって、海賊盤対策が成果を挙げることを織り込んだ三菱総研の報告書と著しく
矛盾する)
Q:5メジャー以外の著作権者が権利を行使したらどうなのか。
A(依田氏):RIAJは業界全体の総意のとりまとめをしているから大丈夫。
Q:文書の形で確約を得ていないという問題が指摘されているが。
A(依田氏):念書をとったから、それが永続的な担保になりえるかというと、そういうわけでもない。
ここはRIAA、RIAJの取り組みを信頼汁。
(でも、5メジャーの念書が担保にならないというのなら、同じ理屈でRIAJの約束もあてにできんよなあ)
Q:輸入業者による並行輸入は止まるのか、止まらないのか
A(依田氏):仮にある著作権者が権利を行使したら、そこからは日本へは輸入できない。
しかし、例えば、他国へ出荷した分をディストリビューターが仕入れて、それを日本へ輸出することを止めることなどできない。
(しかし、そうしたら仲介業者が増える分、小売価格に確実に跳ね返ってくるわけで、それは消費者の負担となる。
これは、反対する理由にはなっても、賛成する理由にはならんと思うが)
と、こんなところ。
依田氏、しぶとい。文化庁の役人や、下手をすると大臣よりしぶとい。
明日は、朝の9時から審議だそうです。
今日はみんな、早く寝よう。
しかし、依田氏が50年間の輸入禁止を希望していたというのには、開いた口が塞がらない。
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