2004年09月07日

公取委における懇談会

本日、公正取引委員会主催で、音楽用CD等の流通に関する懇談会が開催されたそうだ。造反有理さんが、詳しいメモを挙げてらっしゃるので、是非ご一読いただきたい。
参加者は以下の通りだそうだ。

泉川 昇樹 日本音楽著作権協会常務理事
岡田 羊祐 一橋大学大学院経済学研究科助教授
落合 誠一 東京大学大学院法学政治学研究科教授(座長)
岸井 大太郎 法政大学法学部教授
関根 啓子 全国消費者団体連絡会消費者関連法担当
ポール・デゼルスキー HMV ジャパン株式会社社長
中山 信弘 東京大学大学院法学政治学研究科教授
生野 秀年 社団法人日本レコード協会常務理事
ピーター・バラカン ブロードキャスター
水原 博子 日本消費者連盟事務局長
矢島 靖夫 日本レコード商業組合理事長

公取委からは以下の三名。

山木 康孝 公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長
野口 文雄 公正取引委員会事務総局経済取引局取引部取引企画課長
大胡 勝 公正取引委員会事務総局経済取引局取引部相談指導室長


以下、造反有理さんの作成されたメモを引用しながら、頷いたり言いがかりをつけたりしていこうと思う。


○ 矢島:(前略)あの法律の根本は文化の国際交流を促進して、日本文化をアジアに理解して頂くことが、外交問題、国民の理解、不幸な歴史を埋める上できわめて有効であるというのが第1点。

アジア市場に食い込みたいだけだろうが。なに言ってやがる。
日本を理解してもらいたいってんなら、どんどん還流盤を受け入れて、向こうの会社に儲けさせてやれよ。よっぽど感謝されるぞ。


○ 関根:(前略)法制化にあたって、還流防止措置ができた場合には値下げに努力するということを報道によると表明されていた。現在、ここまで来て、どのような努力をされているか、具体的なことがあれば教えて頂きたい。

○ 生野:還流防止措置が導入されたらレコード会社は積極展開して、産業自体が元気になる。元気になった、つまり、利益が上がった場合、当然、消費者にも還元されるべき。ただ、導入が来年1月からである。現在については時期尚早ではないか。


ほほう、言い分が変わったな。
「還流防止措置が出来たら値下します」が、いつのまにやら「還流防止措置によって利益が上がったら値下します」になっとる。
何が時期尚早だよ。大体、還流防止措置によって利益が増大するのかどうかすら、怪しいってのに。


○生野:(前略)SMEのVelvet Crushという商品が日本輸出禁止という形でなされた云々というお話だが、これは、Velvet Crushはアメリカのインディーズのアーティストで、ソニー・ミュージックジャパン・インターナショナルが日本でのライセンスを受けて、日本が世界で一番早く発売する契約をした商品。SMEJの方には、Velvet側から通信販売を米国でしたいという話があって、それは了承している。通信販売をするに当たって、アーティスト側、権利者側が、製造販売業者に対して、ソニー・ミュージック側に配慮して日本への輸出禁止を依頼したということで、日本側は依頼したことも一切ないと当該者から確認している。


調査したんだったら、それを公表しやがれ。
公表しないから、不安感と不信感だけが増していく。んなこともわからんのか?


○ 矢島:(前略)我々はサービス券などはやりたくない。廃業店がどんどん増えている状況であるが、当局の強い要請、多様なサービスを流通ですべきという指導、強い期待を寄せられてきたもの。経営が苦しい中でも。経営は本当に苦しい。ポイントサービスについても消費者が喜んでくれるということで精一杯やっている。きれいさっぱりやめて経営再建に当たらなければならないほど追い込まれている。これに対して、書籍の業界はどういうサービスをしているか。新聞は契約更新にトイレットペーパーなどをくれるくらいである。それらの業界にも当局はサービスを要請しているが、我々と同じようなサービスはそれら業界では受けられない。我々は弾力運用をしすぎるために水原さんのような指摘を受けるのかと。一切サービスしないでおさまるのであれば、経営改善の原資が得られて廃業店が減るとして喜ばしい。
 しかし、弾力運用は国家との約束である。今後も弾力運用は継続すべきと考えている。過去の経過をふまえてこのような見解を申し上げざるを得ない。


新聞社の努力が足りないから、レコード会社の取り組みは十分だってか? くだらねえ。
あとな、「一切サービスしないでおさまるのであれば、経営改善の原資が得られて廃業店が減るとして、喜ばしい」という発言。もう、哀しいまでに顧客サービスとはどういった目的でなされるものなのか、見失っとるな。
ポイントカードでリピーターを増やすことによる増収増益を目的に、ポイントカードを導入しているんじゃないのか?
そのサービスが減収のみをもたらしているというのなら、それは初期の目的を見失ったというだけだ。んなもん、とっとと止めちまえ。
こいつの言い分は、あれだ、増収増益のために始めたポイントサービスを、あたかも消費者への利益還元のためだけに始めたかのような、誤った認識を与えるものだ。本気でそう思っているのなら、もう救いようがないが。


○ バラカン:(前略)建前では、再販制度はは多種多様性、文化保護ということが導入時の説明だったと思う。'80年代以降の音楽業界は、販売されているタイトルは非常に増えており、あまりに多すぎてレコード店にいっても自分の探しているものが見つからないということが起きる。アマゾンのようなサービスがなぜ重宝されるか。大型店でさえ置いてないタイトルもアマゾンですぐに見つかって注文できる。うまくいくと2、3日で届く。非常に便利なものである。再販制度で多種多様なサービスを保って文化を保護するというのであれば、各店舗に全ての商品があればよいが、実態と建前が離れている。今の時代、再販制度は撤廃以外に道はないと思う。


うむうむ(←頷いている)。
再販制度を背景に、商業主義とは一線を画した商品展開をしているのなら、再販制度も正当化できようというものなんだがな。実際は商業主義にどっぷりじゃねえかってのが、バラカン氏の指摘だな。


○ 岸井:再販との関係を含めて。再販制度がある中で措置があると、法律の意図とは別に、機能的に、輸入権の機能として価格維持効果が強力に発揮されることは間違いない。


そうだよなあ。
その布石のためか「還流防止措置で利益が上がったら消費者に還元する」なんていう風に、以前の約束を変えているんだもんなあ。


○ 泉川:作詞作曲家の立場として。資料1にあるように、要件が非常に厳格である。一番のポイントは、権利者の利益、ライセンス料収入である。「不当」の判断基準は何か。原盤ライセンスと、我々作家の著作権使用料である。後者でみると、日本を100とすると中国においては販売価格も低く、日本の4分の1である。また、原盤ライセンス料も低い。小売価格の一定率、又は卸売価格の一定率であるが、中国の場合は日本の3割弱である。一方、韓国、香港になると、韓国の場合、アルバムが日本の半分1,400円。使用料は、韓国は57.8%、香港は43%である。現地で適正に権利処理されたものが日本に還流するとこれだけの差がある。これはまさに権利者の利益が不当に害される場合に該当すると思う。
 欧米との比較では、使用料的にはほぼ同額である。アメリカは日本より若干安いが95%程度。欧州は日本より高い水準。英国であれば100を上回り、フランスは2割増である。著作権使用料の観点からは要件には合致せず、規制対象にならないということを明確に言えると思う。著作権情報センターの研究会で、吉川著作権課長が今回の法改正の趣旨及び条文の解説をされている。私は著作権使用料の観点、原盤ライセンス量の観点で申し上げたが、これについて説明されている。アメリカが89.6、イギリスが119.0、ドイツが99.1、フランスが111.3であると。こういうレベルにある。従って、権利者に不当といえるほどの経済的損失を与えていることはないと考えている。吉川課長は研究会でこのように発言されている。洋盤はこの要件をクリアできないので、従って洋盤は規制対象とならない。我々権利者もまさにそういう理解である



……ええと、どこから突っ込んだらいい?
とりあえず、著作権者界隈では、具体的な基準となる数値が示されていなくても、要件は厳格なものとして受け取られるのか。うむ。
いっそのこと、CDや本の価格も「定価:約3000円」みたいな表示にしてみたらいかが? これでも十分「厳格」だろう?


○ デゼルスキー:再販について。我々は再販がある国、ない国の両方で運営しているので、いずれの経験もある。再販は非常に複雑な話である。再販は副作用が大きいのでやめてしまえという意見もあるだろう。一歩下がってみると、現在の音楽市場の売り上げが3割から4割縮小しているという現状がある。そういう意味で再販が文化、音楽、商品販売店を守るためのものということを考えると、何で縮小したのか。再販制度は機能しなかったのではないかという議論もできると思う。また、世界各国をみても、規制が大きい国はそれが足かせになって利益が分散してしまったり効率が悪くなるという副作用があると考える。
 日本は来年1月からは世界にも稀な規制大国になってしまう。大型チェーン店もインディペンデント店も、再販制度がなくても生き残る道があると思う。再販がなくても、レコード会社が良い音楽さえ作ってくれれば絶対に生き残ると思う。
 とはいえ、再販制度があって、それが撤廃されると、過渡期にはいろいろ問題が生じることは想像される。ディスカウントストアがCDを利益ゼロで販売することも起きる可能性がある。それにより専門店が少なくなってしまうという懸念がある。そういうことを議論するのであれば業界と消費者団体が詳細な建設的にダメージを最小限にどうしたらできるか話し合いをすべき。これは、ドイツで生じた例であるが、ドイツでは価格競争が非常に激しい。消費者は最初は安くなったと喜んだのであるが、レコード店がチャート商品ばかり置いて旧譜を置かなくなって、消費者の選択肢が少なくなってしまった。
 ドイツの例は悪い例だが、再販が撤廃されても今でも市場が伸びている国がある。業界であまりにも規制が多すぎるのでは、競争力を音楽が失ってしまうことを懸念する。若い人は可処分所得が低い。その若者がお金を使う対象がCDでなくなることが非常に大きな問題になる。悪循環に陥る可能性がある。だからといって再販を撤廃することが解ではないが、解の一つとして考えられるかもしれない。



これは、非常に示唆に富む発言だな。
再販制度が全てではない。再販制度があろうがなかろうが、マーケットは良くも悪くもなり得る。
で、こう続くわけだ。「で、日本の再販制度ってのは、うまいこと行っているのかい?」


○ 中山:還流防止措置は文化審議会著作権分科会法制問題小委員会でで議論された。(中略)独禁法、経済法の研究者も消費者団体の代表もいなかった。もっぱら著作権法的観点から、簡単に言えば、安い国で作ったものが還流しては音楽産業がつぶれるという観点から議論からされた。(中略)関係団体の協議を経てということであるが、関係団体はなぜかわからないがレコード協会と経団連であった。それが協議したが、経団連のペーパーにも5年間の時限立法とされていた。時限立法にはなってないのだが、いろいろな意見があった。いずれ時期をみて、維持するかやめるか改正するか、見直す必要があるという意見は非常に強かった。(中略)洋盤についてもそうだが、法的には止まる可能性はある。条件さえ整えば止まる。ただ、今のところは止まらないだろうという見込みに過ぎない。きわめて仮想的な事例をいえば、権利者が途上国に会社を作ってやるとか。あり得るかどうかは別として。こういうものは一度作ってしまうと逃れたい人は懸命に逃れるもの。そういう点も含めて、果たして日本のレコード会社が本当にこれでアジアに進出していけるのかなど、継続的にみていく必要があると思う。


中山氏、ナイス(笑)。
そうか、なぜか関係者はRIAJと、RIAJの会長が食い込んでいる経団連で、時限立法のはずがなぜか時限立法にならなかったわけですな。


○ 矢島:(前略)事実面で洋楽の輸入が入りにくくなる、高い条件で買わざるを得ないということであれば見直す、という付帯決議が付いている。JASRACはその立場で同様の見解に立っているのである。我々の業界を信用して頂いて。(中略)好きな言葉ではないが、山木さん(公取委取引部長)も「監視する」としている。妙なことがあれば早速アクションを起こされるであろう。我々も一国民として約束が守られるであろうと、その責任の一端を担うつもりである。

○ 中山:全然違います。日本のレコード商業組合やレコード協会がどんなに約束しても意味がない。洋盤はアメリカの業者が正規の商品は日本に輸入するが並行輸入業者に対して訴えを提起するかどうかという問題である。日本の組合や団体が保証するとか信用してくれといっても全く意味がない。(中略)逆に、欧米の企業が十分利益が上がるにもかかわらず正当な権利を行使しないで並行輸入を止めないのであれば、取締役の責任になりかねない。だから、日本の団体が補償する問題ではない。



これは、法案成立前からずっと言われていたことなのに、いまだに「私たちを信用してください」かいな。ったく……。


○ デゼルスキー:(前略)洋楽輸入規制だが、私の理解では、1月からHMVが香港、シンガポールから輸入しようとすると止められてしまう。本来は還流防止措置の目的は日本のアーティストの輸入と言うことであったが、ところが、アジアで生産された洋楽CDも適用対象という話になってきている。明確にはどなたでもおっしゃって頂いてないが、アジアからの洋楽CDの輸入は規制対象となるのか。

○ 生野:邦楽についてはコンセンサスを得られているが、中国で作られた洋楽のような話の場合、内国民待遇で、当然洋楽の権利者は400円、500円のCDは不当な利益を害すると考える。RIAAの意見書にも触れられていると思う。内外無差別とRIAAが述べたことにはその辺にポイントがある。



さあ、ご覧あれ。生野氏は、立法趣旨と異なる法律の運用を是認している。「中国で作られた洋楽の輸入防止」って、立法趣旨に含まれていたか?



追記:とりあえず、「レコード輸入権と書籍の貸与権の運用について、基準やガイドラインをいつごろ公表するのか、時期だけでも明らかにして欲しい」という旨のメールを、文化庁に出してみた。
皆さんもメールして、せっついてみてはいかがでしょうか?
施行ギリギリになって、問題点満載の基準、政令、ガイドラインを出してきて、時間がないゆえに反対の声を振り切ってそのまま施行突入ってのが、一番ありそうな筋書きだけに。
posted by 旅烏 at 23:24| Comment(0) | TrackBack(4) | 音楽業界関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ノンゼロサム 或いは三方一両損

こちらのニュースをご覧あれ。
プロ野球選手会が、オーナー会議にてオリックス・近鉄の合併が承認されたらストを決行するってのを決定したってのは、ニュースでも報道されましたが、それに対する現時点での対応がこれだ。
簡単にまとめると、球団側がいうには
「ストを回避すべく、選手会と話し合いを持ちたい。でも、ストを決行したら損害賠償を請求するからね


うむ。
私は、今回の騒動に嫌気が差して、プロ野球なんざチェックしなくなって久しい人間なんだが(こんなときに限って、中日が首位というのが恨めしい)、考え得る限り、これが最悪の対応であるというのはよくわかる。
そもそもが、通常の労使交渉じゃないんだから。労働者と雇用者だけじゃない、ファンの目というものを考える視点が、完全に欠落している。
通常の交渉だったら、損害賠償の請求というカードをちらつかせつつ、交渉しようとするのは効果的な手段なんだろう。
が、それを見ているファンはどう思うか、だ。
ファンがとる対応というのは、いくつか考えられるだろ
うけど

1)選手会側を支持する
2)球団側を支持する
3)静観する
4)プロ野球から離れる

ってなところか。
私は、「たかが選手」発言の段階で、(4)を選択した。いちばん多いのは(3)だろうけど。


もう、端から見ていて、痛いくらいに明らかなのが、このままでは、誰も得をしないということ。

合併承認→スト決行→合併→ファン減少

これが最悪のシナリオだけれども、どこかで誰かが折れないと、こうなる。
ファンが折れる、というのはありえない。そもそも、みんなバラバラなんだから。
選手会が折れる、というのも、うまくない。選手会を支持しているファンも多いわけで(また、そういったファンはプロ野球に強い関心を持つ、いわば「上客」となりえる層であることも重要か)、選手会側が折れるということは、そういったヘビーなファンが、プロ野球から離れることに直結する。
実は、もう選択肢は球団側しかもっていないんだ。球団側が折れるか折れないか。
しかし、球団の多くはストが決行されたら、損害賠償を請求するといっている。
ああ、もう、考え得る限り最悪ですとも。よりにもよって、選手会と、それを支持しているファン層に喧嘩を売りやがった。
こうなったら、どっちに転んでも、衰退の道しか残っていない。合併が承認される限りは。


広島は、今日の会議で唯一、合併を承認せず棄権したそうで。
広島ファンは幸せだよ。
posted by 旅烏 at 04:07| Comment(2) | TrackBack(3) | 日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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