2004年12月05日

友成純一/ピーター・ジャクソン/ジョー・R・ランズデール/田中啓文/ワイドスクリーンバロック

友成純一の「獣儀式」を読了。スプラッタの偉い人という認識のみで、今まで友成純一氏の作品は読んだことなかったんだけれども、いや、おもしれーわ。
血しぶき、セックス、内臓、血しぶき、セックス、内臓、血しぶき、内臓、内臓。
神と悪魔が冥土から去ったせいであの世とこの世の境界が曖昧になり、地獄の鬼が現世に出没するという筋こそあるものの、まあ、ストーリーはあって無きが如し。もうひたすら血しぶき、セックス、内臓、血しぶ(ry
苦手な人は苦手だろうが、読んでる最中のカタルシスたるやものすごいものがある。
普段、あまりホラーとか読んだり観たりしないもので、あまり他の作品と比較できないのだけれど、あれだ、近いのは誰かなーと考えてみたんだよ。この読後感は、どっかで覚えがあったんで。

パっと頭に浮かんだのは、指輪物語で一山当てやがったピーター・ジャクソン監督の、知っている人は知っている傑作「ブレイン・デッド」。
ビデオのジャケットでは、ナースがなまめかしい感じで緊縛なんかされちゃってるんだけれども、本編にはナースは一切出てこないアレだ。
嗜好の限りを尽くして人体を解体しまくる様は実に楽しく……そう、スプラッタなんだけど、実に楽しいんだよ、この映画……画面の前で腹を抱えて笑うことも一回や二回ではきかない。
実にわかりやすく提示されている母性的なモチーフも素敵。
でも、ブレイン・デッドでは笑いが強すぎて、「獣儀式」の読後感とはちょっとずれる。

次はスプラッタ・パンクなるサブジャンルの大将格にされかけた暗い過去があるジョー・R・ランズデールの「モンスター・ドライブイン」(創元SF文庫より)。
なんや知らんが謎の現象でカーシアターに閉じ込められることになった人々が、いい感じに極限状況に追い詰められて、なんかモンスターとかも出てきていい感じに人間性剥奪されていく様を陽気に描いた快作。
短くて一気に読めるせいもあるんだろうが、実に爽快な読後感。
この爽快さってのは、殺戮と混乱がもたらすカタルシスも大きいんだけれども、最後まで揺るがない主人公の価値観によるところもまた大きく、この「最後まで人間性を尊重する主人公」ってのがランズデール作品に共通する特徴である(って、解説に書いてあった)。
言い換えると、その人間性を頼りに読者は読み進めていけるわけで、「獣儀式」にはそういった救いは存在しない。やっぱし、ちょっとずれるな。

で、思い至ったのが田中啓文。そうだそうだ! 「蹴りたい田中」だ!
駄洒落のためには人体はもちろん人間性とか小説としての構成とかいったものを叩き潰すその傍若無人っぷり。傍若無人! そうそう、それだ!

傍若無人つながりのほかに、もう一つつながるように思えるとこがある。豪快な風呂敷の広げっぷりがそれ。
「獣儀式」も、後半、すさまじい勢いで風呂敷を広げる。たたみ方なんて知ったことか。広げろ広げろ。
田中啓文作品にもそういったところがある。代表作でもある「人類圏」シリーズなどに顕著だろう。駄洒落と悪趣味のために人類とか生命とか銀河とかを軽ーく巻き込んでいく。
あとがきやらなんやらから察するに、田中作品における風呂敷ってのは、ワイド・スクリーン・バロックを志向したものだったりするんだな、これが。
ワイド・スクリーン・バロックって何かというと……さすがに私の手に余る。検索しとくれ。
キーワードはブライアン・W・オールディス、A・E・ヴァン・ヴォクト(ヴァン・ヴォート)、アルフレッド・ベスターと「虎よ、虎よ!」、バリントン・J・ベイリーと「時間衝突」「禅銃」「カエアンの聖衣」、クリス・ボイスとその傑作長編「キャッチワールド」ってなところでよろしく。
つーか、「キャッチ・ワールド」読めば事足りる。読んじゃえ読んじゃえ。


つーわけで、本人が意図したかどうかは知らないが、というかたぶん意図はしていないだろうけれど、「獣儀式」はワイド・スクリーン・バロックの称号を得るになんら遜色のない傑作だと言いたい訳ですよ。
posted by 旅烏 at 22:40| Comment(0) | TrackBack(1) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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