2005年01月19日

東野圭吾氏の発言に見る安易な顧客像

Copy & Copyright Diaryさん経由、Sankei Web「【出版インサイド】本のレンタルにも「貸与権」導入 著作権使用料で交渉難航」。より、人気ミステリ作家である東野圭吾氏の発言を取り上げようと思う。

記事を引用すると

 作家の東野圭吾さんは「利益侵害だけを理由に、著作権を主張しているわけではない」と、強調する。「作家、出版社は、書店で定価で買ってくれる読者によって報酬を得、次の本作りができる。書店で買う人、新古書店で安く買う人、レンタル店で安く借りる人、図書館で無料で読む人が、同じ読書サービスを受けるのはアンフェア。より早く新刊を読めるなど、書店で買うお客さんを優先したい」


ってな感じなのだけれど、Copy & Copyright Diaryの末廣さんは「本の価値を決めるのは作者ではなくて読者である」と憤慨している。これには全く同意。
同意した上で、もうひとつ気になった点を書いてみようと思う。それは、東野氏がどのような顧客像を思い描いているか、だ。
作家にしてみれば(狭い視野で見ると)新刊書店で本を買ってもらえないことにはおまんまの食い上げであり、新刊書店で本を買ってくれるお客さんを大事にしたいというのは至極もっともなことに思える。そこまではいいんじゃなかろうか。
問題は、新刊書店で本を買わずに他のサービスを利用して読書する行為を指して「アンフェア」と言っていることなんだな。
「私は新刊書店しか利用しない。新古書店も図書館も漫画喫茶もレンタルも利用せずに読書を楽しんでいる」という人もいるだろう。そういう顧客にとっては、この東野氏の発言は痛くも痒くもない。
しかし、だ。では、新刊書店は一切利用しないで読書を楽しんでいる、という顧客はいったいどのくらいいるのだろうか?
もちろん、データなど無い。これから書くことは私個人の憶測に過ぎない。だが、多くの(もちろん「すべての」ではない)顧客は新古書店・図書館・漫画喫茶・ブックレンタルといったサービスと新刊書店というサービスを併用していると考えるのは、極々自然なことではないだろうか?
少なくとも、そう考えなければ新古書店の隆盛などは本来ありえない事態なのである。新刊書店を利用するお客さんからの本の入荷無しに、新古書店は成立し得ない(そして新古書店を利用するかどうかは、個々のお客さんにゆだねられるのだ。それは新古書店が決められることでも、新刊書店が決められることでも、ましてや作家や出版社が決められることでもありえない)。
東野氏の発言は、新刊書店を訪れた顧客を厚遇し、新古書店や図書館といった施設を利用した顧客をアンフェアだと非難するものだ。
東野氏は、「ひょっとしたら両者は同一人物かもしれない」とは考えなかったのだろうか?
他のサービスを利用した顧客を非難する。そんな方法で顧客の心をつかめるのだろうか?そんな方法で顧客サービスを向上させることが出来るのだろうか?
これもデータは無く、私の独断に過ぎないが、答えははっきりとNOであるように思える。
考えてもみて欲しい。他の店に行ったと聞くや目の前で舌打ちしてみせる。そんな店主のいる店に行きたいかい?
posted by 旅烏 at 23:53| Comment(24) | TrackBack(5) | 出版業界関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あんまり難しいことはよくわかりませんが、読者さんがどこで、どういう形で、本に出会うかは、読者さんが決めればいいことだし、本は読者に出会えてこそ本として幸せだと思うので、本と出会う場所や形によって読者が本から受けるサービスを変えたほうがいい、とは思いません。

ただ、本を読者に提供する、本との出会いの場を提供する業者側から著作権者・出版権者に対する、なんていうのかな、著作物の使用料・配布料?が、あまりにもアンバランスなのがなんだかなとは思います。漫画喫茶や新古書店などは著作物の2次使用・3次使用で読者から料金を取っているわけですが、著作物の2次使用・3次使用代を著作権者・出版権者にぜんぜん払わないってのはおかしいよな、だって著作物は「財産」なんだし、と。

焦点をあてるのは「読者」に対してではなく、本という著作物を利用して商売をする「業者」に対してなんじゃないかなぁというのが、記事をざっと拝見しての自分の印象です。
Posted by あまろ〜ね at 2005年01月22日 11:18
コメントいただきましてありがとうございます。あまろ〜ねさんの書く文章は色々勉強になります。これからも拝見させていただこうと思っています。

私は新古書店が著作者に著作権料を払うのには反対の立場です。といいますか、アンバランスというよりもまず払わなければいけない根拠が思いつかないですし。
数ある古物商の中で古本だけが製作者に寺銭払わなきゃあかん理由がわかりませんし、そうするべしと積極的に主張するというのもわかりません。例えば中古車や古着、中古ゴルフクラブや中古釣具なんかで同様の主張は聞いたこと無いですが、著作物にだけなぜにそういった特別な権利が存在すると考えるのか。なんで著作物にだけそんな特権が許されえ得るのか、理解不能です。
これが「著作物に限らずクリエイターに利益を還元できる仕組みを作ろうぜ」という話なら、そういう社会もアリだろうと思うんですけどね(漫画喫茶については、考えがまとまっていないのでパス)。
Posted by 旅烏 at 2005年01月22日 12:45
間違い間違い。新古書店じゃなくて、レンタル系のお店のことです。貸し本屋(っていまもあるのか?)みたいな。セカンドハンズショップが著作権使用料を払うべきだとは、自分も思いません。
つまり、仕入れ時に1回だけ代金を払い、その商品を何回も使用してそのつど消費者から料金を取る商売をする業者からは、少しくらい著作権者側にバックがあってもいいんじゃないかなっていうことです。
Posted by あまろ〜ね at 2005年01月22日 14:55
え? それって、去年の著作権法改正でもう貸与権が成立しておりますが。
で、その代金が音楽なんかと比べて法外だっていうんで交渉が決裂し、法律施行後(今年の1月1日からです)も機能しておらず問題となっております。
Posted by 旅烏 at 2005年01月23日 02:49
あ、そうなんですか。すみません。大元の記事読んでなかったもので。
ちなみに自分は、図書館からも少しもらえないかなぁと思ってます。なんてことをいったらいろいろなところから袋叩きにあいそうで怖い(汗)。
Posted by あまろ〜ね at 2005年01月24日 11:21
えーと、では貸与権についてちょっとだけ補足を。

この貸与権という代物、レンタルブックに対して報酬を請求できるというだけだったらまだ批判は少なかっただろうと思うんですが、実際に成立したのはそれに加えてレンタルでの使用を拒否することも出来るという強力なものです。また、貸与権は著作権法上での権利ですので、著作権を有していないことが多い出版社には報酬を受取る権利は生じないはずです。
また、公立ではない施設での図書館(企業内とか学校とか)も貸与権の対象になってしまうかも、ってのも批判されていますね。
図書館からもらうってえと「公貸権」って奴ですが、これに関しても賛否両論。ただ、成立した貸与権と同じような発想で著作者側に強力な権利が付与されてしまうとまずかろうと思っております。
貸与権・公貸権については、ウチからもリンクさせていただいてますCopy & Copyright Diaryさんが詳しくフォローしてらっしゃいますので、お時間があるときにでもどうぞ。
Posted by 旅烏 at 2005年01月24日 12:30
うーん。
ざっと元記事を読ませてもらったのですが、
当然意見だの主張だのといったものには、視点、というものがありますよね。
当然、作家さんの意見の中において、誰が誰に対してアンフェアなのか、と考えてみれば、「新刊書を買った人間と中古を買った人間と同じサービスを受けるのは、(著作権者に対してきちんとした対価を払うことのできる新刊書を買った人間にとって)アンフェアだ」と取るのが普通なんではないでしょうか?



この場合、舌打ちするのは、店主ではなく、新刊書を買った人間なんじゃないかと考えるべきなんじゃないかと。

んで、それじゃあ悪いから、っていうんで、新刊書買う人にはなんらかのメリット設けましょう、ということなんじゃないですかね?

だとしたら、殿様商売が基本だった出版業界にとっては、中々の進歩なんじゃないかと思うわけですが。

管理人さんの意見でよく散見されるのが、「工業品と著作物、一緒にしちゃいかんの?」という論ですよね。
それはそれとして、一つの意見だとは思うのですが、それならばなぜ世界遺産だの、重要無形文化財だの、国宝だのがあるんだ、っていうことになるんじゃないかと思うんですよね。
俺んちの隣の山だって、立派な自然だよ、とか、じいちゃんの持ってる伊万里焼だってそりゃあ大したもんだよ、とか、姪っ子がもってるリカちゃん人形だってかわいいじゃん、とか。
文化的な価値、というのはやはり厳然としてあって、その中で、工業品と著作物に待遇やら、要請やらで差が出てくるのは当たり前なんじゃないかな、と思うわけです。

もっとも、その価値観を認めるのは、管理人さん自身であって、「俺はそんなの認めない」といえば、そうですか、ってことになるわけですが。

ただ、そこまで根本的な認識がずれていると、ある意味、説得力に欠けるように僕は思うんですよね。

ダイヤモンドも、炭素原子の集合体に過ぎません。ダイヤモンドをダイヤモンドと認識し、その意味と価値を認めてこそ、初めて4Cといわれるダイヤモンドの評価が下せるんじゃないかな、と僕は思うわけです。
どうにも、管理人さんの意見は、著作物を紙とインクの集合体と看做しているような、そんな座りの悪さを感じるんですけどね。
Posted by scifighter at 2005年01月24日 13:15
それでは「はいそうですか」の方向でお願いいたします。
私、文化的価値ってのが(というより「価値」というものが)厳然として存在しえるとは思っておらず、むしろ相対的なものの代表格であるといってもいいんじゃないかと思っておりますので。
scifighterさんにとって私の話が説得力に欠けるように、私にとってもscifighterさんの話は説得力を欠くものなんですよ。お気づきかとは思いますが。

ちょっとずれますが、著作物を紙とインクの集合体だとは思っていませんよ。それは、車を鉄とガソリンの集合体だと思うくらい不遜なことだと思っております。
別に、著作物を保護すること自体は結構なことだと思いますよ。ただ、それが他業種の足を引っ張る形で行われることには到底納得は出来ませんが。
逆にね、「車なんか鉄の塊じゃないか」といわれているような座りの悪さ、といったらわかっていただけますかね。

で、このエントリにつきましては、TB先でも反対意見や解釈の違いやらコメント欄でのやりとりやらがあったりいたしますので、ぜひそちらもご覧になっていただけるとよろしいかと。
私は新刊書(新刊書店)に何らかの上乗せをすることには反対しておりませんので、念のため。むしろ、それが真っ当な企業努力ってもんだろくらいに思っております。
Posted by 旅烏 at 2005年01月24日 14:43
>東野氏の発言は、新刊書店を訪れた顧客を厚遇し、新古書店や図書館といった施設を利用した顧客をアンフェアだと非難するものだ。

この文面だけ読むと、「新刊書店を訪れた顧客を厚遇」することもまた良いことではない、というようにとれるんですよ。
そういう意識がなければ、最初の文節はいらないように思うのですが。
これも解釈の違いの範囲内でしょうかね(笑)

まあ僕もはいそうですか、と納得しても構わないんですが。

著作物に特権的な地位を認めない、というのはとりもなおさず、著作権法の法の精神を認めていない、ということになりはしないかと僕は思うんです。
あの法律は、著作物は特別なもんだ、という前提の下成り立ってるわけですしね。
ゲームも、映画も、音楽も、本も、絵画も、写真も。
車や、TVやブランドもののバックとは違うということですね。
車が鉄の塊だとはいいませんが、10年落ちのマーチ号なんかは次第に鉄の塊に近づきつつあるんじゃないかとは思わなくもありません。
当然、ヴィトンのグラフティなんていうのも、人によってはスーパーのビニール袋以下の代物ではないかと思うわけです。

著作権者がようやく獲得した特別扱いを、またやめにしましょうというのでは、19世紀の時代に逆戻りなんじゃないかと、思ってしまうんですけどね。
Posted by at 2005年01月24日 23:15
はあ、そうですか。
では、無知蒙昧な私に「著作権法の法の精神」とやらを解説していただけるとありがたいです。
Posted by 旅烏 at 2005年01月25日 00:23
ついでに、「著作権法の法の精神」とやらが、図書館法の目的や国立国会図書館法の理念を踏みにじっても良い理由も教えて頂けると幸いです。

東野さんの文章で、私が納得いかないのは「図書館で無料で読む人が」の部分。図書館がこの世に存在する理由を考えろと言いたい。

いや、別に東野さんが100年後、200年後の人に自分の著作物を読んで欲しいと思わないのであれば止めはしませんが、それを他の人に押しつける権利はないですよね。
Posted by Kim. at 2005年01月25日 09:43
まず、わかりやすく言えば著作権というのは「情報」を保護するものなんですね。例えば、本というのはパッケージ(紙・インク)とコンテンツ(ここでは「情報」とする)からできているわけです。車や電化製品の耐久消費財とはちがって「情報」は劣化しないんですね。ここが全然ちがうんです。だから、べつに「著作権は特権的なもの」ではないんですよ。「情報」というものが商品になってから歴史上そんな時間はたってません。「情報」というのは、著作権というのは特権ではなく今までのプリミティブな製品とは違うものなのです。

ですから、「文化的価値」とかそうゆうことではないんです。そこがscifighterさんは決定的にちがってます。あくまで商品としての「情報」をどう扱うかということなのです。だから、「文化的価値観」とかそういう主観的な問題ではありません。値段のつけられない文化財とは違うのです。あくまで客観的な社会における商品として「情報」をどう売買していくか。そうゆう問題です。

新刊本の売上が落ちてきた。そういう問題がおこったときに、その要因の一つとして新古本やレンタル、漫画喫茶という業態があります。わたしは別に反対はしてません。問題は複雑ですが、本来この手の産業というのは出版業界が経営努力をすれば防げた事態だと思うからです。要するに、需要はあったのにそれを察知できなかったということですね。(このへんはわたしのエントリーを合わせて読んでいただけると幸いです)

ブックオフなどはその需要を察知して事業をおこしたのだから、もちろんよいことだと思います。そして初めは出版側に使用料の提示もした。それを出版業界が突き放し法廷にもちこまれた結果、お金をとることができなくなった。まったくアホな業界です。

しかし、結局のところメーカーである出版社しか「情報」の生産ができない。ここが問題です。いくら付随産業ががんばっても、書籍産業が衰退していけば必然的にそれらも下がる。極端な話、作られなければ売れないんです。だから、その手の産業は著作権料を支払うべきだとわたしは考えます。それは生産のサイクルを維持することで、付随産業をふくめた全体の発展につながるのではないでしょうか。もちろん、今提示している料金は高すぎます。だけど、それをフリーライドにしろということではありません。(ここに取次とかが絡むから複雑になります)

また、出版社は本を売るために広告をうったり賞をつくったりして需要を創出します。その効果によって新刊を売り出したときに、レンタル店にずらーって並んだら新刊は売れなくなってしまうかもしれない。だから、ある期間はレンタルを辞めてくれといっているのです。それが嫌ならば新刊のレンタルは上乗せの手数料をとるのでもいいと思います。これは映画もいっしょです。早く見たい人は映画館にいく。すこし遅くてもいい人は二番館にいき、DVDやレンタル、地上波といった流れになるわけです。

ただ、もちろん一概には言えないところです。出版業界は構造不況になっており、仮に新刊本の値下げをすれば人はレンタルせずに新刊を買うのかもしれません。ここは委託制と再販制がからむ問題なのでここでは書きません。

図書館についても、わたしのブログに少し書いてありますのでよろしかったらご覧ください。
Posted by さくらい@くたばれ!さくらい at 2005年01月25日 16:37
おっ! さくらいさん、またどうも。さっき別のBlogでさくらいさんにお返事をしてきたばかり(笑)。
さくらいさんが新たにかかれたエントリについては大筋でかなり同意です。著作権料を払うべきか否かについてはまあとりあえず置いておきますが(というか、出版側の主張の仕方がお粗末過ぎるよなあ(笑))。
近いうちに項を改めて書こうと思っているんですけど、新刊書店のサービスとして主体となるのは低価格じゃないだろうなあと思っています。それよりも流通の再構築の方が急務だろうなあ、と。
Posted by 旅烏 at 2005年01月25日 16:48
ども。ブログのコメント欄っていろいろなフェイズがあって見るのたいへんですよね。困った困った。

大筋でわかっていただけるとは嬉しいです。物流も問題が大きすぎるのですね。構造の問題がかなり大きなところを占めてしまっていて。複雑で出口が見えない、というのが本音です。

>Kimさん
わたしのブログに書いてあるのですが、いちおう書いておきます。
図書館はなんのためにあるのでしょうか。知る権利を保つためか、文化を普及するためか。本が貴重品だったころにくらべ、本は安くなりました。なぜ本だけが文化財の名目でひろく一般に無償で公開されるのでしょうか。映画や音楽は文化財ではないのでしょうか。仮に、今後レンタルブックサービスのようなものが始まった時に図書館だけがなぜ発売と同時に新刊を貸し出せるのですか。

もちろん、高価な書籍や専門書のようなものは図書館で公開されるべきです。しかし、一般書籍はせめて、民間のレンタルブックサービスと同じ期間は公開をすえおくようにするべきではないかと思います。そうでなければ、民間の圧迫にもなるでしょう。より区民・市民の需要があるような映画やポップミュージックを貸し出しはしないのでしょうか。

もう書籍は「文化財」だからと言える時代は終わったのです。いや、すでに終わっている。専門書や一部の書籍を除いて、いわゆる「電車男」のようなものはあくまで商品であり、それを生業にしている民間がある時点で「文化財」だから無償で公開という時代は終わっているのです。


Posted by さくらい@くたばれ!さくらい at 2005年01月25日 19:07
いやいや、さくらいさんとのやり取りのおかげで随分考えを整理できましたし、興味の対象もちょこっと動いたりしましたので、ありがたかったです。
で、私流に私とさくらいさんのやり取りを要約するとこんな感じ。

旅烏「ったく、なんでうちらの商売の邪魔すんだよ。新刊書の不調なんざ、そっちの責任じゃねーかよ」
さくらい「いや、出版もダメダメなんだけどさ、それでも救ってあげなきゃと思うわけよ。本がなくなったら困るっしょ?」
旅烏「そりゃまあ、困る」
さくらい「でしょ? で、出版もダメダメではあるんだけど、新古書店やら図書館やらも売上減の原因ではあるんだからさ、おすそ分けしてもいいんじゃない?」
旅烏「ちょいまち、売上減の原因ってえけど、そのうちどれくらいがウチらのせいで、ウチらの売上をわけたらどのくらい新刊書店が回復するわけ?」


ってな具合で、私的には理念的な検討から具体的数値を用いた検討の段階へとフェイズが移った感じなんですが(だから、データ探し、先行研究探しの段階)、さくらいさん的にはどんな感じっすか?
Posted by 旅烏 at 2005年01月26日 03:06
個人的にはその手の数値的な証明というのはできないと思います。やはり数学でないので、万人からみて客観的な証明っていうのはできないんですね。東大の教授やハーバードの教授がどんなに計算しても、このような問題というのは実際にやってみないと万人を説得することはできない。結果的に正しいものであっても、万人は納得しない。ここがポイントです。それがわかるのは歴史というような長い時間の中でのことなんだと思います。

P2Pの問題もそうなんですが、視点によってさまざまですよね。インディーズレーベルとかはP2Pによって売上が伸びてると主張してますが、これは当然のことなんです。だって、それまでみんな知らなかっただけなんですもん。P2Pがうまい広告ツールになってるんですよね。その視点から見ると、P2Pもすごい有益なんですよ。でも、テレビで宣伝してるアーティストを見てあの歌が欲しい、じゃあP2Pで探しちゃおうというのは問題ですよね。メジャーに所属しているアーティストだって昔のアルバムみたいに忘れられているものはよい効果があるかも知れない。難しい問題です。(P2Pに反対するわけではないです、あくまでさわりだけ。それに音楽業界の腐敗ぐあいは出版の比じゃないですし)

でも、現実的に落としどころをみつけて判断する必要がある。それが司法ですよね。あるいは政治です。新古書店の場合は司法の手によって利用料を払わなくてもいいという判断が下された。だが、レンタルやおそらく漫画喫茶も立法および司法によって利用料を支払う判断がなされます。この判断が違っていたのか、それはすぐにはわからないのかなと思います。

ですから、新古書店の問題はもう解決済みであるので置いといて、レンタル・漫画喫茶は(暫定的であっても)利用料を支払うという判断になっています。あとの問題は「いくら払うのか」また「どのくらいの期間を置くのか」ということですよね。ここは長くなるのでひとまず置いておきます。
Posted by さくらい@くたばれ!さくらい at 2005年01月26日 12:28
自分のBlogに(つたなくも)なんとかまとめてみましたが、とりあえず3点ほど。

1.図書館は万人の知る権利を保障するためにある。

2.アーカイブの取捨選択を一介の企業にまかせてよいとは思えない。

3.映画や音楽も文化財でしょう。


取捨選択をせず、できうる限りの文献を収集、保存し提供するのが図書館の役目であり、そのために国会図書館には、すべての出版物が納入されるのです。(国立国会図書館法10条及び11条)


あと、Blogには書き損ねたのですが(書いてて、1回全文が吹っ飛んだ(大泣))、「構造の問題」とするさくらいさんの意見には同意です。新たなエントリにも書かれてるようですが、私もベストセラーのみに依存する現在の出版業界のビジネスモデルって、どこかおかしいと感じます。
とはいえ、私も業界再編のための落としどころの見当は全くつきません…。
Posted by Kim. at 2005年01月26日 17:38
法の精神、ですか?
著作権法第1条

 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。

このまんまじゃないかと思うんですよ。
著作権法は「文化の発展」を目的とされて制定されてる、と考えるべきじゃあないかと。
つまり、著作者は文化の発展に寄与する人間なんで、保護しましょう、と。
その周辺の方々も保護しましょう、と。
当然、著作物も保護しますよ、と。
結構な特別扱いではなかろうか、と思うんですよ。

あくまで、最終目的は文化の発展というわけで、僕なんかはまあ随分大げさな法律だなあ、と思ってしまうわけですが。

このあたり、あくまで、文明を発展させましょう、じゃなくて文化を発展させましょう、というところが面白いなあと思うんですが。

おそらくこのあたり、管理人さんも目を通しているはずですが、どうだったんでしょう?
解釈に違いがあったんでしょうか?
もしそうならそれこそ「無知蒙昧」な僕に教えて頂きたいと思うんですが(笑)

>さくらい様
条文をそのまま読めば、著作物はすなわち「文化的財産」というように捕らえるべきだと僕は思います。

ですので、一概に「情報」だけと言い切ってしまうのには抵抗があります。

当然、今の憲法と同じく、随分実情に合わない部分も出てきていると思いますし、著作物の価値を情報と捕らえるやり方は極めて現実的でかつわかり易いことだとは思います。
けれど、それが本来の考え方なんだろうか、と思うわけです。
著作物を単なる情報を主体とした商品として捕らえていいなら、皆こんな苦労はしていないはずなんですよね。


僕はまさに最終消費者でしかなく、正直、新古書店や図書館が無くなることよりも、新刊書店のなくなることの方が、(今のところは)ずっと重要だったりするわけです(笑)
当然、資本主義を生きる最終消費者の心理としては、「良い物を安く」というのがある訳なんですけど、良いものが供給されなくなってしまえば、価格競争も意味をなさないと思ってしまうんですよね。
Posted by scifighter at 2005年01月26日 19:51
scifighterさんが「著作権で保護されているから、著作物というのは特別なんだよ」とトートロジーに陥っているのはともかく、コメントありがとうございます。

さくらいさん>いや、私が求めているのは絶対的な証明ではなく(そんなことが出来ないだろうなってのはわかりますんで)推測であり試算なんですよ。
万人を納得させることなど無理だとしても、多くの人を納得させようとする義理はあるし、そのためには試算くらい要求したってバチはあたりますまい。
そこを「万人を納得させるのは無理だから」という理由で怠ってしまうのはまずいですよ。私もデータ探ししている最中ですんで、さくらいさんもそんなこと言わずに、見付けたら教えてください。

Kimさん>図書館のアーカイブとしての機能をより重視している感じですね。でもそれだと、「貸与禁止期間をもうけてもアーカイブとしての機能は維持されるんじゃないかな?」という反論もありえますね。
というか、個人的にはこれもデータによる検証待ちな気がするなあ。図書館における最新刊の貸し出し頻度とか、それがしめる全体での割合とか。
今のところ、出版業界の主張ばかりが先行していますからね。
実は今回のやりとりで気づかされたことの1つが「多くの主張が検証抜きで言いっぱなしになってないか?」ってことなんです。

scifighterさん>「著作権法は著作物は特別なものだという前提の下で成り立っている」って言った直後に「著作物は著作権法で保護されているから特別」ですか。
まあ、そのほうがあなたは幸せなんだろうから、それでいいんじゃないすか?
Posted by 旅烏 at 2005年01月26日 20:40
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/03100301/005.htm
たくさんありますが業界団体側からの視点ではこのあたりでしょうか。逆に(「ない」という証明は難しいのですが)レンタル事業者側のデータはそこまで見かけませんでした。上の例でいえば、わたしはこのデータに(そこそこ)納得しているわけですね。
もちろん、わたしは数理的なデータというのを軽んじているわけではありません。数理的なデータですべてが判断されるわけでは(必ずしも)ないということが言いたいだけです。その辺もお分かりいただけるだろうと考えます。

>scifighterさん
間違ってはいないとは思います。ですが、わたしはそのような考え方で問題の核心にたどりつけることはないと思うのです。その点は認識の違いですね。
基本的な考えは一緒です。わたしの場合は「新刊書店」ではなく「出版社及び創作者」が無くなると業界全体が沈むよね。だったら少しはお金を還元しようよ。ということですね。この辺は上記のコメント欄にある通りです。
Posted by さくらい@くたばれ!さくらい at 2005年01月27日 00:57
さくらいさん>ざっと見た限りですが、ちょっと弱いですね。せっかく「6ヶ月レンタル禁止群」「3ヶ月レンタル禁止群」「発売日当日よりレンタル群」の3群を設定しているのに発売日当日よりレンタルされた作品の新刊売り上げデータしか示されていないってのは実験としては致命的です。さらに欲を言うと、この3群にもうひとつ「全面レンタル禁止」ってのを加えて、それぞれの売上を比較検討して欲しいところ。
おっしゃることは良くわかるんですが、理論的・理念的検討と数値的・数理的検討は車軸の両輪です。特にこのような、実際の数値に影響を及ぼすことを目的とした場合は重要かと思います。他にもなにかご存知でしたらお手すきの時にでも教えていただけると幸いです。
Posted by 旅烏 at 2005年01月27日 07:45
旅烏さま
一定期間の貸与禁止はアリだと思いますし、現に一部ではされてなかったかと思います。
問題は、おっしゃられるように「データもないのに業界に言われっぱなし」なところだと思います。

図書館は(特に国会図書館以外の公共図書館は)限られた予算の中で、できうる限りの文献を買いそろえる必要があるというジレンマがあるため(司書の方々の頭を悩ませるところであります)、どんな本でも大抵1冊しか入ってないはずです。同じ本が2冊入ってる所をほとんど見た記憶がありません。
となると、図書館がどれだけ著作権者の機会損失を産むのかが疑問なのです。借りられれば、1週間くらいの間の機会損失は1人です。貸し出し禁止としても、例えばセカチューくらいの厚いハードカバーなら2〜3時間くらい読むのにかかるでしょうが、ひっきりなしに人がやってきて読んでも1日に3〜4人。1週間6日で24人。かなりおおざっぱですがこんなもんかと。
(やはり実数は欲しいですね。説得力に欠けますし。図書館は貸し出しの記録は残りますので、やろうと思えばデータは集まるでしょうが、来て読むだけ…は難しいですかねぇ?)
本屋で平積みされて立ち読みされまくるのと、どっちの機会損失のほうが影響が大きいんでしょうか?(無論こっちもデータはないでしょうが、最近の大きい本屋はご丁寧に椅子まで完備してるところもありますから、立ち読みで済ます人はけっこういると推測します。)

図書館協会も、もーちょっと図書館の理念を説いて、データを提示して、業界を納得させる(とゆーか、つけいらせない)努力をすべきかと思いますがねぇ…動き弱いなぁ(苦笑)
Posted by Kim. at 2005年01月27日 09:09
東野氏って、自分のすきな漫画家のネタや結末の手法までそっくり真似るという盗作まがい行為をしながら、著作権の主張はするんですね。
Posted by みり at 2005年08月30日 10:09
東野圭吾氏の作品は読んだことないんでよくわかんないですが、それは言わないでおいてあげましょうよ(笑)。
東野司なら読んだことあるんだけどね。
Posted by 旅烏 at 2005年08月31日 03:08
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