この二件の調査報告書を読んだ感想を書こうと思うのだけれど、初めに断っておくが、私は経済学はまるっきり知らない。門外漢もいいところだ。
だから、これから書く感想は、てんで見当違いな可能性が大いにある。
まず、二つの報告書を読んでの素朴な疑問なのだが、日本レコード協会及び文化庁には、この二つの報告書しか提出されなかったのだろうか。それともこれはあくまで要旨をまとめたものに過ぎず、別に詳細なデータや参考文献を記されたものが提出されているのであろうか。
後者ならよし、前者なら、お粗末。
私が知らないだけで一般の市場調査ではあまり参考文献を明示しないものなのかもしれないが、もしそうなら、その一般の市場調査そのものが恐ろしい。
しかしまあ、三菱総研のほうにはわざわざ「要約版」と但し書きがしてあるから、おそらくは、きちんとしたようやくじゃないものも併せて提出されているんだろうな。そうに違いない。そうじゃなきゃ困る。
まずは三菱総研の調査報告。
タイトルは「アジアにおける日本音楽ソフトの需要予測(要約版)」
以下、素朴な感想や疑問点を列挙する。
・アジアにおける現在の日本音楽ソフトの市場規模として、金額としては正規ライセンス盤・海賊盤共に同規模の約50億円、枚数としては正規盤が約500万枚、海賊盤が約700〜900万枚と推定されている。
残念ながら、この要約版ではこれらの推定の根拠となった調査や文献は記されていない。きっと、完全版には記されているに違いない。
・海賊盤が今後どのくらいの割合で減少していくか、中国以外の地域では2007年には現在の8割、2012年には6割に減少、中国では5年後に現在の3分の2、10年後に3分の1に減少、台湾では5年後には現在の7割、10年後には4割に減少するとして試算がなされているが、残念ながら、これらの数値の根拠となるべき調査や文献や根拠は、この要約版では記されていない。きっと完全版では記されているに違いない。
・ここ数年、アジアでの音楽ソフト全体の需要が減っていることが示されている一方で、アジアでは収入のなかで音楽に使われる割合が日本に比べて少ないため、市場が拡大していく余地があるとしている。
が、その市場規模を予測するための数値として、今後の年平均経済成長率予測(中国は経済発展がなんかすっげえので、公式経済成長目標)を用いている。
残念ながら、この要約版では(中略)いない。きっと完全版(中略)違いない。
・さて、試算に用いる数値に年平均経済成長率を採用しているが、上記したように、この調査では今後アジアでは「GDPに占める音楽ソフト購入の比率」が上がると予想されることを持って、日本の音楽ソフト市場がアジアで拡大しうることの根拠としている。
平たく書くと「アジアの人たちだって、もっと食費やら光熱費やらなんやら削って、音楽にお金を使うようになるさ」ってなもんだ。
が、この根拠を反映した指標として、年平均経済成長率の予測を採用するのは適当ではないのではないか? これは、GDPに占める音楽ソフト購入の比率が上がることを反映したものであるというより、今後GDPそのものが増加することを反映したものであり、その中の割合・比率には直接関係しない。
いや、関係するのかもしれないが、残念ながら、この要約(中略)完全(中略)違いない。
もし、この「年平均経済成長率の予測」という指標が、「GDPに占める音楽ソフト購入の比率の上昇」を反映したものでないとしたら、「(A)ここ数年アジアで音楽ソフト市場が縮まっているけども、(B)GDP内比率が挙がるからオッケーよん」というこの調査の主張そのものに疑問が出てくる。
(B)を反映しない指標を使って試算をしたところで、(B)の主張を補強する材料にはなりえず、(B)を根拠を持って主張し得ないのであれば、そもそも(A)の傾向を否定することが出来ない。
・この報告書では、日本の音楽ソフトが現地市場に占める割合は、台湾ではふた桁に「達している」という表現をなされている。
「達している」という表現からは、増加してふた桁という現在の数値になったのだという連想がなされるが、その連想を裏付けるためには、ここ数年の市場状況を併記する必要がある。
残念ながら、この要(中略)完(中略)ない。
・また、この報告書では、レコード輸入権が創設されればアジア市場に積極的に参入していきたいという企業が多数あることから、レコード輸入権が創設されれば、現地の正規ライセンス盤市場が活性化され、さらにそれが海賊盤市場の縮小をも促し、アジア市場における日本の音楽ソフト市場が拡大するとも主張している。
ちなみに、試算する際に用いられた各種数値指標には、特にこの主張は反映されていない。
つまり、この試算結果においては、この主張は前提とされていないため、この主張と試算結果は関連を持たない。
もっと言うと、結論に関係しない主張なんて意味あるのか?
とりあえずはこんなところ。
次は株式会社文化科学研究所の報告書を読んでみます。