青山ブックセンター閉鎖にまつわる大騒ぎと違和感: 万来堂日記

2004年07月29日

青山ブックセンター閉鎖にまつわる大騒ぎと違和感

青山ブックセンターが閉鎖して、なんか、みんな大騒ぎしている。
まあ、自分のお気に入りの書店が閉鎖したってんだから、感傷的にもなるわな。
で、私はというと、皆が大騒ぎしている、それを頭で理解は出来るのだけれど、だからどうしたという冷めた感じが否めない。
なぜか？
それは、私が青山ブックセンターとはついぞ縁の無い、地方在住者だからだ。

田舎者が何を言っているんだ、と思う人もいるだろうけど、なんかね、いままでが恵まれていたというだけじゃないのか、ある書店の閉鎖で活字文化の進退がどうこういうところまで言ってしまうってのは勘違いじゃないのか、ってのがあるんですわ。まあ、田舎者の僻みかもしれんけど。
私は大学卒業まで新潟にいたのだけれど、一番読書に夢中になった時期、お世話になったのは、全国に何店舗も展開する大型書店ではなかったんだ。紀伊之国屋は新潟にもあったから利用したことはもちろんあったけれど、むしろ地元の、品揃えに優れた新潟市内の万松堂や、痒いところに手が届いた新津市の英進堂、いつまでも時間をつぶせた大学の生協、大学周辺の古本屋、SFの品揃えが充実していた五泉市の古本屋である古文堂、駅ビルに入っていたヴィレッジ･ヴァンガード、そういった書店だった。おまけに、他にも北光社なんていう書店もあって、選択の余地もあった。
（もう長いこと新潟の街を歩いていないので、これらの書店がどうなっているのかわからない。ヴィレッジ･ヴァンガードが撤退したのは知っているんだけれど）

つまりあれだ、地方にだって読書を楽しんでいる人たちが大勢いて、そういう人たちを育んできたのは、青山ブックセンターやら、紀伊之国屋やら、リブロやら、ブックファーストやら、書泉グランデやら、ジュンク堂書店やらといった全国の（とはいっても限られた）都市部に展開する大型書店ではなく、地元の書店だったわけでしょ。
そういった地元の書店も、たくさん倒産しているわけですよ。これは、日本にも遅れてやってきたモータライゼーションとやらで、郊外型の店舗というモデルが発達し、従来の街の中心に位置する大型店舗というモデルが衰退していくという、大きな流れに沿ったものでもあるんだけれど。
で、とにかく地方の書店もガンガン潰れた。いわゆる街の書店なんかはもう悲惨。私の生まれ故郷の小さな町では、もう何年も前に一軒も書店がなくなっちまったよ。
この時、どのくらい多くの人が、「読書という文化の危機」を訴えたんだろう。
それでも、私や周りの本好きたちは、本を購入し、貪るように読んでいたんだ。

そして、つい最近青山ブックセンターが潰れた。
これも大きな流れに沿ったものだわな。今時、家賃は高いわ集客はさほど見込めないわで、都心部にビジネスチャンスを求める小売業者など、ほとんどいない。
安い家賃で、そこそこの集客が見込める郊外のほうが、利益が出るんだよ、今のところ。今後はわからんが。
もうあえて言ってしまうけれど、当然じゃねえか、潰れるのも。
全部が全部潰れることもないだろうが、全部が全部生き残ることもありえない。あたりまえだ。
そりゃ、自分のお気に入りの本屋が無くなったらさびしいってのはわかるんだがね。
もう、ぶっちゃけちゃうと、なんかむかつくんだよな。俺のは田舎者の僻みだが、いわゆる都心部の驕りってのも、多分にあると思うぞ。

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posted by 旅烏 at 03:32| Comment(3) | TrackBack(3) | 書籍 |

この記事へのコメント

多分にね、ひがみですな（笑）
例えば、九州の人口全部あわせても、１０００万人いないわけですから、東京での成功、失敗はその産業の趨勢を占う鏡と言っても過言ではないんじゃないかと思うわけです。

都心には地方の何倍も、何十倍も、ひょっとしたら何百倍も読書を趣味としている人たちがいる。
そういう「最大限恵まれた環境」を持ってしても、商売として成立しなくなってる、つう焦燥感もあるんじゃないかと。

ただ、僕が思うに、読書という習慣は文字が生まれた太古の昔から、ずうっと続いてきたもので、でかい書店のひとつやふたつ潰れたくらいで、そう簡単に無くなりはしない、と思ってます。
だから、たまにどかんと売れる。
以前は恒常的に分散して存在してた「読者する層」が一気に集中した結果じゃないかと。

出版、流通の問題もあるかと思いますが、なにより人が「本屋」好きにならないと、仕方ないんじゃないかと。
ずらっとならんだ文庫本の背表紙やら、紙の匂いやら、色とりどりの雑誌やら。
そういう本屋を構成する全ての要素に魅力を感じない人が増えてるんじゃないかなあ。
辞書を引かずに、ググッちゃうお手軽さを選ぶようなノリとでもいうか（笑）
今日日のエンタメを扱うハコの中では、一番広告、宣伝に手を抜いてるんじゃないかと思いますしね。
かつてのように、本屋に行くことがクールにならないと、書店業って成立しなくなるんじゃないかと。

密林、なんつう海外資本にばっか儲けさせても悔しいですしね。

Posted by scifighter at 2004年07月30日 12:03

いつもコメントありがとうございます。
でも、今回は反論させていただきますよ（笑）。

まずは、都心が産業にとって（この場合は書店業ですね）恵まれた環境であるというのが、幻想以外の何物でもありません。
家賃高すぎ。
地方では採算が取れるであろう売上を上げていても、都心では難しいなんていう例もしばしばです。
人口が多いから客も多いだろう、だから大丈夫だというのも、幻想です。
来客数や売上高は、その店舗の床面積にある程度対応します。人口が多ければ売上が上がるというものでもありません。これはまあ、行列の出来るラーメン屋を想像していただけるとわかりやすいかと。確かに都心なら行列が出来ますが、行列を無尽蔵に処理していけるわけではありません。利益の上限はおのずと制限されてきますし、諸経費は死ぬほどかかります。おまけに競争相手も多いですから、未来永劫行列が出来続けるわけでもありません。
簡単にいいますと、都心ってのは相当に特殊な市場なんです。東京では採算が取れないから進出しないって企業も、ひとつやふたつではないと思いますよ。
その、特殊な市場の浮き沈みで世の中が終わるみたいに一喜一憂している様子は、私から見ると非常に滑稽です。まあ、scifighterさんはそういった過剰反応はされていないようで何よりなんですが（笑）

で、今調子の良い産業を眺めて見てください。
そのうち、どれだけの産業が都心を中心に発展しているのか考えると、都心を重視しなきゃならん理由が、ますますわからなくなります。

ていうかね、別に、都心を抜きにしても、産業は普通に成り立ちますよ。
都心で成功したものを地方へ「輸出」するという時代は、もうとうの昔に終わっております。
今はむしろ逆。地方で成功したものが、都心に輸出される時代です。

Posted by 旅烏 at 2004年07月30日 22:14

Posted by adult amatuer women at 2006年10月03日 13:47

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