2004年08月29日

六本木+ヴィレッジヴァンガード=?

以前、青山ブックセンターがその営業を停止し、それを一部の人たちが出版文化の衰退であるかのごとく大騒ぎしているのをみて、それに対して大いに文句を言ったことがあるんですが。
で、非常に特殊な市場であるところの「都心」を過大に重要視する傾向にも、大いに文句を言ったわけなんですが。
そこにこんなニュースです。ソースは昨日の日経新聞。ネット上では見つけられなかったんですけれども。
ヴィレッジヴァンガードの六本木ヒルズ店が撤退するとの事です。
この不況にもかかわらず、消費者の支持を集め、成長している書店も中にはあるわけで、ご存知の通り、ヴィレッジヴァンガードはそんな企業の1つですね。
既存店だけ見ても昨年より成長しているというのですから、本物の証です。六本木ヒルズの店も、昨年比で見ると5%伸ばしてはいるそうで(まあ、5%って、物足りない数字ではあるでしょうが)。
にもかかわらず撤退、です。
記事では、主な原因としてふたつを挙げていました。
ひとつは利用者の年齢が他店に比べ高かったことにより、いわゆる「ついで買い」が少なかったこと。
もうひとつは運営コスト高。
しかしですね、ヴィレッジヴァンガードは確かに若者から支持されている店だとは思うんですが、その品揃えを見てみると、ジャズのCDは置いてあるは、英米文学のマニアックなところは置いてあるは、美術書やら写真集やら、むしろ若者ではないところに対応した商品が多く置いてあるわけです。
品揃えや商品展開面で六本木のお客さんに対応した売場作りができなかった、ということはあるのでしょうが、その原因を「ついで買いの不足」のみに求めるわけにもいかないでしょうね。まあ、ヴィレッジヴァンガードの中の人は、そんなことは100も承知だと思うんですが。
要は、コスト高、及び何らかの要因でもって、利益が思ったほど出なかったってことなんでしょう。


で、あっさりと店をたたむことにした、と。
これが英断であると思うんですよ。
出店する意図からして、売上のみを狙ったものではなかったでしょう。その企業のブランドイメージを高める、フラッグシップ店としての役割を担っていたはずです。社内でどういった位置づけになっていたのかはわかりませんが、会社によっては社運をかけたプロジェクトとして扱われていてもおかしくありません。
それを、あっさりとたたんでしまった。わかってはいても、なかなかできることではありませんよ、これは。
結果的に旧来の形態にしがみつくことになり、営業を停止した青山ブックセンターとはまさに好対照です。

「ヴィレッジヴァンガードも撤退かあ。まだまだ不景気なんだなあ……」では済ませて欲しくないニュースですね、これは。
posted by 旅烏 at 05:57| Comment(5) | TrackBack(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日経にデカデカと報道されてしまう、っていう段階で、ヴィレヴァンの心中いかばかりかと思うのですが(笑)

以前、「元気のある産業は東京発信ではない」という記述で「はてそれはなんの産業なのだろうか」などと思っていたのですが、ヴィレヴァンもその一つだったのですね。
僕的には、あーゆーサブカルっぽいのは正直しんどくなってきてたので、未だ発展中とは知らず(涙)

僕も小売のはしくれなので、東京という市場の特殊性はよく理解しているつもりです。地代、テナント賃料、人件費、どれをとっても図抜けています。
原宿あたりに20坪の店舗でも出そうものなら、保証金で何千万単位の金額が飛んでいきます。
半年で店舗の総入れ替えなんてざらですしね・・・。
しかも、六本木ヒルズはその中でも特に難易度の高いデベロッパーさんだと思います。
因みに、僕の今いるテナントの賃料が坪1万円くらいなのに対し、六本木ヒルズの賃料は坪3万5千円ほどだといわれています。300坪の六本木ヒルズ店ですと、家賃だけで、月1千万かかっちゃうんですよね(怯)
さらに敷金だけでおそらく億単位のお金が動いてる筈です。
そこからさらに人件費やら販促費やら、その他いろいろを考えて行くと、固定費だけで毎月1500万はかかってたんじゃないですかねぇ。
誰も止めなかったのか、とは思いますが。

今のヴィレヴァンの利益を生み出す中心客層は、どっちかというと、サブカル系漫画好きか、あーゆージャンクっぽいおもちゃを好む人種だと思うんですよ。なんか変な形の椅子だとか、オブジェだとか。
そういういわば「ガラクタ」を衝動買いしてしまう感性の持ち主を相手に商売してると思うんですね。
返品可能とはいえ、書籍やCDだけでは利益は取れないですし、利益率の高い雑貨が売れなければ、ヴィレヴァンの利益構造そのものを否定することになります。ジャズや美術書では利益は取れませんよね。やっぱり。

単価2000円も行かないようなショップで、オープン月には5000万を売り上げたそうですが、目標月商一億、というのはやはりバーが高すぎたように思います。
結果として、そもそも「六本木ヒルズ」にはヴィレッジヴァンガード的なものは求められていなかったのかな、という。
あそこはバリバリの(自称)ハイカルチャーですから(笑)
英断、とありますが、僕としては「よくここまで保ったな」というのが正直な感想ですねぇ。
実際何度か足を運びましたが、店内が綺麗すぎて、かえって安っぽく見えてしまうという雰囲気でしたねぇ。
不景気、というよりはむしろ、ヴィレヴァンのリサーチ不足、としか僕には思えませんでしたが。
したがって、これをもって、サブカルチャーの衰退と受け止める人は殆どいないと思われます(笑)
そのあたりがABC閉店とのインパクトの違いです。

デベロッパーというのは酷なもので、一定の利益を挙げなければ、容赦なく追い出しにかかります。
テナントの優劣がデベロッパーの体力に直結するわけですからね・・・。家賃さえ払ってくれてたら良い、というものでもありませんから。

また、ヴィレヴァンが全国区になるきっかけとなったのは、下北沢店の成功によるところが大きく、やはり東京という市場を抜きにして、商売は成り立たない、というのは正論だと思うんですけどね。
恐らく、下北店が閉店、となればそれなりに感慨にふける人も出るかもしれません。

個人的には最近のヴィレヴァンのSC出店攻勢には少し戸惑いを隠せなかったりするのですが(涙)
ニューファミリー層に一体どこまで食い込めるのか、謎ではありますが・・・。

それはそうと、青山ブックセンター、営業再開のようです。
http://www.asahi.com/book/news/TKY200408240262.html
文化の担い手、というのはやはりどこからか支援の手が差し伸べられる、という良い好例なのではないかと思います(笑)
Posted by scifighter at 2004年08月31日 19:59
さあ、ほぼ書き終えていたお返事を間違えて消してしまったのですが、気を取り直してお返事です。途中で泣いたら慰めてください。
どうも、ご無沙汰です。
ヴィレッジヴァンガードも地方発の元気な企業のひとつですが、ほかにもようけありまっせ。
というか、そんなことを思うのは、私が以前ホームセンター業界にいたからかもしれません。あの業界ときた日にゃあ、大手企業は全て地方中心。都内はコストの高さ故、草刈場にすらならず、ってな状況ですから。
だもんで、必ずしも全国区の知名度など、商売には必要ない、とも思うのですよ。ドミナントエリア(もしくはその店の商圏)において、きっちりとした知名度さえ確保していれば、それでいい、と。もちろん、それ相応の企業努力が必要ですが。
今ヴィレッジヴァンガードをよく利用しているお客さんの中で、ヴィレッジヴァンガードが全国的な知名度を有しているってことを意識しているお客さんがどれだけいるかってえと、疑問なんですよね。

あと、やはり私は英断だと思います。
scifighterさんも同意いただけるのではないかと思いますが、端から見てると「とっととスクラップしちまえよ、こんな店」と思えるような店舗でも、様々なしがらみで、ながーーいこと営業しているってのが、往々にして見られるもんです。
ブランドイメージを高める目的を担っていたであろう六本木ヒルズの店ともなれば、そういったしがらみの強さたるや、ちょっと想像がつかないほどであっただろうと。
そんな中で撤退して見せたのは、やはり感心してしまいます。
とはいえ、そういったブランドイメージを高める目的での出店自体が良いことか悪いことかってのは、また別の問題ですし、「誰か止めなかったのかよ」っていうのは、もう諸手を上げて同意いたしますが(笑)。

というか、実質的に洋販傘下となったAOBの営業再開を「文化の担い手、というのはやはりどこからか支援の手が差し伸べられる」ってのは、ちょいとセンチメンタルが過ぎやしませんかい?(笑)
Posted by 旅烏 at 2004年09月01日 02:10
というか青山ブックセンターは単なる不動産投資への失敗が経営破たんの原因なわけですし、
地方の書店が潰れるのは、旧来の競争のない保護された特殊な業界であった書店の世界にもやっと競争原理が持ち込まれる時代が訪れたのが原因なわけです。
実際、地方でも元気のいい書店はたくさんありますが、
それなりにがんばっているところばかりです。
書籍のセレクト、陳列、独自のPOPなどのディスプレイ。

古くからやっている小規模書店の多くは、商売のノウハウもなく、取り次ぎ任せの配本に頼らざるを得ない。
残念ながら潰れるのはある程度当然のことでしょう。

青山ブックセンターは、書店としてはかなりがんばっている(工夫している)にもかかわらず、潰れてしまったのをみな惜しんでいたわけで...

すべて数年前から一般的に言われていることなので、
明らかだと思うのですが
何度読み直しても旅鳥さまの怒りの理由がさっぱりわからないんですが。すみません。
Posted by う〜むむむ at 2004年09月13日 20:39
コメントありがとうございます。
私が怒っていた理由というのは、単純なものでございまして。
「青山ブックセンターが潰れたくらいで、日本の出版文化がどうとか騒いでるんじゃねーよ。全国津々浦々の本好きにしてみれば、『ABC? 行った事ないなあ』って人がほとんどなんだから」
といった具合で。
いい本屋だったから潰れたの惜しんでいるといった人が大多数だったのは存じておりますが、中にはそういった勘違い発言をしている人もいた、というわけであります。
Posted by 旅烏 at 2004年09月13日 21:04
なるほど、そういう意味でしたか。
失礼いたしました。
早速のレスポンス、ありがとうございました。
Posted by う〜むむむ at 2004年09月13日 21:11
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