2004年07月29日

本は回復したのかな。

Copy & Copyright Diary@JUGEMさんによると、今年上半期の書籍売上、7年ぶりに前年を上回ったそうです。
うん、めでたい。
たしかにあれだ、「バカの壁」「負け犬の遠吠え」が話題になったり、「世界の中心で愛を叫ぶ」でいつエリスンが怒り出さないかとひやひやしたりと、ベストセラーがらみの話題も多かったなあ、と。
私、出版不況ってのは構造不況だと思ってまして、不景気で売れなくなってきても、硬直的な価格設定や流通形態のためにロクな手を打つことが出来ず、ずるずるときてしまったってことだと思っております。
で、「確実に売れるものしか出版しない」という、悪い意味での商業主義も進んでいるなんていう話もありますね。
というそんな中での業績回復は、(まったく実感は湧きませんが)景気のわずかな上昇と、現場(書店も出版社も含む)の地道ながんばりが功を奏したものだと思うんですが、構造的な問題は何一つ変わっていないわけで、ここで売上の回復に胡坐をかいてしまうと、数年後に同じ状況に追い込まれそうな気もしますね。
とりあえず、小売が何か手を打とうにも身動きが出来ない、出版社と取次の力がやたらでかくなってしまっているいびつな流通をなんとかしたほうがいい感じがします。
というと、(まあ、レコード輸入権を巡るやりとりでも見られた光景ですが)出版業は特別なんだから流通もこれでいいんだっていう意見も出てくるでしょうが、出版業が商業ベースにのってもう久しいわけですから。これからも商業ベースに乗っかった商売をしていくというんなら、やっぱり流通から見直したほうがいいかと。
他業種から見ると、めちゃめちゃいびつなんですよ?
たくさん売るために硬直した構造を見直すか、それともたくさん売ることを諦めて、小部数でも利益が出るようなやり方を模索するか、どちらかに取り組んでいただくってのが、商売の筋かなあ、と。もちろん、出版社によってどちらを選ぶかは違ってしかるべしでしょうし、同じ会社でも部署によって違うってのもありでしょうが。
これから人口は減っていくわけで、売上が伸び続けるなんてことはありえないから、後者をオススメいたしますがね。

というか、「理想的な経営を行えば売上は伸び続ける」という幻想は根強いものがあります。それがガラガラと崩れていくという点で、これから大変な時代になるんでしょうかね?
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2004年07月25日

「太陽の塔」読了 或いは洛北マジックリアリズム

森見登美彦「太陽の塔」読了。第15回日本ファンタジーノベル大賞 大賞受賞作品。奥付を見たら第2刷。売れているのね。めでたいことだ。

軽快でひねくれていてユーモア溢れる文章は、いわゆるテキストサイトの影響なんかを感じさせる。特に序盤のあたり。
で、基本的には、大学「5年生」が、風変わりな、しかしいかにもありそうな日常を過ごす様を追った作品。
途中まで「確かに面白いけど、なんでファンタジーノベル大賞なんだろう?」と思っていたのだけれど、読み終えてみたらなるほど、これって、いわゆる京都を舞台にしたマジックリアリズムって奴なのだな。
森見登美彦を、勝手に「洛北マジックリアリズムの雄」と呼ぶことにしよう、うん。

ストーリー自体は至ってシンプル。簡単にまとめると、ひとりの青年が世界と和解する様子を書いた話だとも言える。読後感よし。オススメっす。
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2004年07月13日

SF小説の話をふたつ

SF小説の話を二つ。

8月10日、「ダーティペアの大復活」が刊行予定とのこと。
あくまでダーティペア。後ろにFLASHはつかない。
ダーティペアは、小学生の頃にアニメを見ていて、そのまま貪るように「ダーティペアの大冒険」「ダーティペアの大逆転」を読破し、そのうちに「ダーティペアの大乱戦」も出て大喜びし、「ダーティペアの大脱走」でテンションがダウン。FLASHの一作目でギブアップし、以降は未読。
とはいえ、小さい頃の思い出の作品の復活なので、今回は買ってみよう。
小説もあったのか。読んでみようかなーという奇特な方は、最初の三冊をオススメ。
ちなみに、個人的には断固として土器手版。
映画まで見に行ったっちゅーねん。


もひとつ。
ハヤカワ文庫SFの話。
最近シリーズ物の刊行ばっかりだなーと思って、ここ1年(2003年7月〜2004年6月)の発行点数を調べて見た。
29点中、24点がシリーズ物。
実に82.75%。
なんだかなー。
海外SFなんか読む変わり者は、シリーズなんぞ大して興味ないと思うのですよ。主たる読者層を読み間違えているというか。
シリーズ物を否定するつもりなんざ毛頭ありませんが、いくらなんでも偏りすぎでしょ、こりゃ。
これだけシリーズ物を刊行して、一番話題になったのが、非シリーズ物のテッド・チャン「あなたの人生の物語」であるというのも、なんともなあ。
同じハヤカワでも、JAやFTだと非シリーズ物の作品を刊行してるし(「マルドゥック・スクランブル」「第六大陸」「デスタイガー・ライジング」は、シリーズってえより分冊でしょ。「クレギオン」の復刻はシリーズ物だろうけど。FTでは<プラチナ・ファンタジー>で、現代ファンタジーにスポットを当ててるし)、Jコレクションでも、若手(除く、飛浩隆)の長編を意欲的に刊行してるんだから、同じことをハヤカワ文庫SFでもやりゃあいいと思うんだけどなー。
シリーズ物をガシガシ刊行するなんていう、手垢のついた方法を取ったところで、新しい読者を獲得できるとも思えないし。
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2004年07月11日

小川一水を読んで過ごした一日

小川一水「導きの星」と「ハイウイング・ストロール」をひたすら読んで過ごした一日。
やっぱり面白かったわー。地球外文明を扱った大長編の「導きの星」と、気軽に楽しむべき航空SF「ハイウイング・ストロール」。
性善説的というか、楽観的というか、そんなところから来るであろうご都合主義的なところや、いわゆる「萌え」が鼻につくところなんかもあるのだけれども(もちろん、鼻につかないところもある)、それを補って余りある面白さがあるなー。
ハードSFかくあるべし、というか。世界観の根底に技術観があるあたり、クラークからの流れを感じたりもして。
海洋SF「群青神殿」も、ヘリコプターによる人命救助を扱った「回転翼の天使」も、非常にエキサイティングで面白かった。もう何冊か積んであるので、続けて読んでみよう。楽しみ。
この人と同い年なんだよなー。なんだか嬉しくなりますね。
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2004年06月22日

「冬のマーケット」再読

最近、今まで積んであった河出文庫の「20世紀SF」を読んでいて、その中には読んだことのある短編もいくつか収録されている。
で、ウイリアム・ギブスンの「冬のマーケット」を再読した。
うわー。これって、こんなに凄い話だったっけ? 正直、以前に読んだときにはろくに印象に残らなかったんだが。
サイバーパンクの特徴として「先進的なテクノロジーがジャンクとして生活に溶け込んでいる風景を描く」ってのが言われるけれども、まさにその見本のような短編。
いや、むしろ、それよりもう一歩踏み込んで、そのジャンクが人間性と軋轢を起こすところにまで及んでいる、そんな短編だ。すごいわ、これ。
読んだ当時はピンと来なかったスプロール三部作も再読してみようかしらん。
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2004年06月20日

SFミュージアム! 或いは シアトルは地上の楽園なのか?

若旦那の独り言2004さんのエントリーで知ったのですが。

シアトルにSFミュージアムオープン

おお! これは夢ではないのか?
シアトルはSF者の楽園か?
決めた! 俺は大きくなったらシアトルになる!

で、サイトを覗いてみますと

HALL OF FAME

なるものが。おお! SFの殿堂ですな!
SFの立役者たちがずらりと並んでいます。もう、嬉しいから列挙しちゃうよ! ここを見ている人の99%がわからなくたって、俺が嬉しければそれでいい!

SFミュージアム、HALL OF FAMEのメンバーたちは…

ブライアン・W・オールディス
ポール・アンダーソン
アイザック・アシモフ
アルフレッド・ベスター
ジェイムズ・ブリッシュ
レイ・ブラッドベリ
エドガー・ライス・バローズ
ジョン・W・キャンベル・Jr
アーサー・C・クラーク
ハル・クレメント
サミュエル・R・ディレイニー
ゴードン・R・ディクスン
ヒューゴー・ガーンズバック
ハリイ・ハリスン
ロバート・A・ハインライン
デーモン・ナイト
アーシュラ・K・ル・グィン
フリッツ・ライバー
エイブラハム・メリット
マイクル・ムアコック
C・L・ムーア
アンドレ・ノートン
フレデリック・ポール
エリック・フランク・ラッセル
メアリー・シェリー
ロバート・シルヴァーバーグ
E・E・スミス
シオドア・スタージョン
ウィルスン・タッカー
A・E・ヴァン・ヴォクト
ジャック・ヴァンス
ジュール・ヴェルヌ
H・G・ウェルズ
ケイト・ウィルヘルム
ジャック・ウィリアムスン
ドナルド・A・ウォルハイム


以上、錚々たるメンバーが……


嗚呼! ここはパラダイスではなかったのか?
俺の好きな作家が狙い撃ちするかのように入っていない!!

ぱ、ぱらいそはどこにあるのか……


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2004年06月15日

メディア関係者は権利が大好き!

Copy&Copyright Diary@JUGEMさんのエントリー「貸与権の次は」によりますと、日本雑誌協会と日本書籍出版協会が、貸与権の成立を受けて共同声明を出したそうです。
Copy&Copyright Diary@JUGEMさんが注目してらっしゃるのは以下の箇所。

一方で、出版者の権利問題につきましても貸与権の付与を契機に前進させたいと存じます。

出版者の権利って言われてもよくわからなかったので、日本書籍出版協会のサイトを見てみたら、出版者の権利についてという報告書が公開されていた。
これを読むに、出版社はレコードのように著作隣接権が欲しくて欲しくてたまらないらしい。
で、ここで《陸這記》crawlin' on the groundさんのエントリーから引用してみると…

「(出版界が)商業にもなってない」と書いた理由について、もう少し具体的に書いておくべきかもしれない。ぼくは、日本の出版界における最大の悪弊は、雑誌に関しては「1)原稿料の額や支払い時期が発注時に明示されないのが当たり前であり、2)最終的に支払われない場合も少なくなく、3)しかも、よほどのことがないとそれが問題とならない」ことであり、書籍については「1)刷部数や定価、印税率といった仕事の対価に結びつく数字の決定プロセスに、著者(あるいはその代理人)がほとんど関与できず、2)出版社によってなされた決定の根拠も著者(あるいはその代理人)に示されない」ことだと思う。つまり、作家やライターは出版社から対等なビジネスパートナーだとは見なされておらず、原稿を書いたり本を出したりすることが、そのことで生計を立て得るまっとうな経済行為としてみなされていない。ということだ
(太字強調は旅烏による)

こんな状態で自分の権利だけ主張されてもなあ。出版社よ、お前もか。
どの出版ジャンルでも同様の部分はあるんだろうけど、私の好物であるSF小説というもの、そりゃあもう絶版・品切が多くてですね。2chのSF板で「初心者にもオススメのSFを教えてください!」なんてレスがつこうものなら、挙げられる作品が軒並み絶版という笑えない事態もしばしば。
80年代のSFブームに乗っかったクチの、大手出版社からの作品なんか、もう死屍累々。生存者ゼロ。ジェノサイドです。
つまり、消費者も著作権者(作者)も尊重されているようには思えないわけで。
あれだ、そんなに権利が好きか?
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2004年06月10日

岡崎京子

全く知らなかったんだけど、岡崎京子が「ヘルタースケルター」で、第8回手塚治虫文化賞を受賞していたそうで、いや、めでたい。実に鬼気迫る作品だったもんなあ。
関係ないが、これを買ったとき、近所の本屋は「岡崎京子フェア」をやっていた。ストレートに書店員の趣味が出ている感じがして、好感が持てる。
それはともかく、その賞の贈呈式が行われたそうなんですよ。
え? 贈呈式? ご本人出てくるの?
という具合で、焦りまくってニュースを確認したら、ご本人ではなく母上が出席してらっしゃいました。ちょっと残念。
事故でセミリタイア状態というと、カーティス・メイフィールドなんかを連想してしまうんだけれども、カーティスも90年代に奇蹟の復活を果たしたわけで。
岡崎京子もいつの日か、作品を引っさげてまた姿を見せて欲しいものです。あと50年くらいは待てるぞ。
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2004年06月05日

カルビーの

イタロ・カルヴィーノの「見えない都市」を読もうと思いまして、ぺらぺらとページをめくるわけですが。
結構いらっしゃると思うんですが、あとがきから読んだんですね。
そしたら、同じくカルヴィーノの「冬の夜ひとりの旅人が」を絶賛しているわけですよ。
待てよ。
「冬の夜ひとりの旅人が」なら、以前に買った覚えがあるぞ。確かちくま文庫で。
積んである本が多いんで、それが何年前の記憶かも定かではないけれど、確かに覚えがあるぞ。
こうなると現金なもので、「見えない都市」よりも「冬の夜ひとりの旅人が」の方を読みたくなってまいります。
家中の捜索を開始開始いたしました。


………………


とりあえず、我が家には積ん読が785冊あることが判明しました。
うむ。充実感。
ん? カルビーがどうかしましたか?
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2004年05月16日

ティプトリーの写真

史上最高のSF作家の一人、ジェイムズ・ティプトリーJrの写真っつうのを、2ちゃんでみかけました。
やはり、一筋縄ではいかなさそうなご婦人ですな。なんだか嬉しいねえ(笑)
この人が「接続された女」「故郷へ歩いた男」「楽園の乳」「ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?」「エイン博士最後の飛行」「一瞬のいのちの味わい」といった傑作短編群を作ったんだな。すごいね。
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2004年04月30日

「意識の科学は可能か」っつう本

「意識の科学は可能か?」っつう本を、今読んどります。新曜社刊。
まだ序盤しか読んでいないんだけれど、この手の本にしては語り口が平易で読みやすく、いい感じ。
著者は5人。2人が知覚心理、一人が知覚心理でも特殊な部類に入るであろうギブソニアン、一人が哲学者(あれだ、言語論的展開がどーとかいう、ウィドゲンシュタイン以後の奴だ)、そして最後の一人がなんとユング心理学の立場から、意識という現象について論じている様子。
ユンギアンがこの手の問題について語るなんていうのは、もう前代未聞というか自殺行為というか、いや、まだユンギアンの章まで読み進めていないので自殺行為かどうかはわからないんだけれども、ある意味、非常に楽しみにしている。
精神分析を親の敵のごとく嫌っている私が読んでもなるほどと思えるような、骨太な文章を期待。
この面子に、更に徹底的行動主義の立場の人と、神経科学の立場の人、コンピューター・サイエンスの立場の人が加わったら、完璧だったんだろうが、まあ、それは高望みしすぎだわな。
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2004年04月20日

ふたりジャネット

テリー・ビッスンの短編集「ふたりジャネット」(河出書房新社・奇想コレクション)を今読んでいるんだけれど、これがいい。
雑誌で訳出されたときに読んでいる作品も多いのだけれど、再読に耐え得るどころの話じゃない。
洒脱で暖かみがあり、それでいて抑制の効いた文章を読んでいるだけで顔がニヤニヤしてくる。
とんでもない発想の物語が多いのだけれど(もしもイギリスが海の上を移動し始めたら、とかね)、突拍子もない物語を読んでいるという感じがしない。むしろ、なんて事のない日常生活を、非常に生き生きと描いているかのような印象を受ける。筆力のなせる技だろうか。
ページはまだ半分以上残っている。そのことがとても嬉しい。

ここ二、三年、河出書房は渋いSFやファンタジーを意欲的に翻訳してくれている。ファンとしては嬉しい限りだ。
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posted by 旅烏 at 06:26| Comment(1) | TrackBack(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年04月19日

メド・シップ

マレイ・ラインスター「メド・シップ 禁断の世界」読了。メド・シップシリーズの三冊目にして最終刊。
50年代のSFを読むのは久しぶり。
恒星間を巡る医療船エスクリプス20と、主人公カルフーンの活躍を描くシリーズ。中には時代を感じさせるような古い部分もないではないけれど、公平に職務を果たそうとするヒーローというのは、やっぱり訴求力がありますな。楽しく読めたわ。
残りの二冊「メド・シップ 祖父たちの戦争」「メド・シップ 惑星封鎖命令!」も手に入れたいところだけれど(特に「祖父たちの戦争」なんて、タイトルだけでワクワクするけれど)、みつからねえだろうなあ(苦笑)。
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2004年04月01日

イーガンの短編と「三重盲検法」

グレッグ・イーガンの話題作「しあわせの理由」をようやく読了。
刺激とセンチメンタリズムにあふれた短編集で、とても楽しく読むことが出来た。近いうちに、本サイト(万来堂書店)の方で(今更ながら)紹介でもしてみようかと思ったのだけれど、気になる点がひとつ。
物語の本筋や面白さには関係しない部分だと思うけれど、軽いネタばれになってしまうので、そういった情報を知りたくないという方は、以下、読まないようにしてください。
以下、あぶり出し。
さあ、始めるぞ。
とある短編の中で二重盲検法(double blind method)についての記述がありまして。
二重盲検法というのは、実験結果に観察者・被験者双方からのバイアスがかかってしまうこと(あらかじめ得た情報によって、実験結果に影響が出てしまうこと)を避けるために考えられた実験法です。
薬と偽薬(プラシボといいます)を使った実験を例にすると、観察者の側に「この被験者には偽薬を使っているんだから、治療効果は出ないはずだ」という思い込みがあるために、微妙な実験結果をその結論に有利なように解釈してしまう。
またはその逆、「私は偽薬を投与されているんだから、効果など出るはずがない」という被験者の思い込みのために、本来出るはずだった効果が打ち消されてしまう。こういった現象を指して「バイアスがかかる」などというのですが。
このバイアスを排除するために、観察者・被験者の双方ともが、使われているのが薬か偽薬かを知らない状態で実験を行う(投与されたものが薬か偽薬かを知っているのは、その実験を更に観察している第三者のみ)。これが二重盲検法であります。

これが医療現場で適用されるときの倫理的な難しさってのは、想像に難くありません。まずひとつは、偽薬ってのは、効くであろう薬と比較するために(統制群として)用いられるのが普通なのですが、患者に了承を得ず偽薬を投与してその結果患者に不利益が出た場合(死ぬとか)、誰も責任をとれないこと。
もうひとつ、患者に事前に了承をとって投与した場合、二重盲検法そのもののメリットが失われてしまうこと。
つまり「あなたに投与するのは効く薬かもしれませんし、偽薬かもしれません」って説明された場合、患者さんは「私に投与されたのは何の効果もない偽薬かもしれない」という認知(不安と言い換えてもいいです)を抱えてしまうわけで、その認知が、本来生じるはずであった偽薬の効果を減じてしまうことは、十二分に考えられます。つまり、バイアスがかかってしまう。これではもはや二重盲検法と言えません(そのために、実際の臨床では動物実験が非常に重要になってくるのですが)。

さて、ここからが問題。
イーガンの作品では、その問題を回避するために、患者に無断で偽薬を投与してしまうというシチュエーションが出てきます。
これが職業倫理的に許されない行為であろうことはもちろんなのですが、イーガンはそれを「三重盲検法」と書いています。原文には当たっていませんが、おそらくtriple blind methodの訳語でしょう。
これがおかしい。
被験者が「自分の投与されたものが偽薬である(かもしれない)」という認知を持たないというのは、二重盲検法の必要条件の一つだからです。
つまり、イーガンが「三重盲検法」という用語で示した実験手続きは、なんのこたない、本来的な「二重盲検法」に過ぎないのではないか?

まあ、これが作品の傷にはなりえないんですが、ちょっと気になったので書いてみました。怒らないでね(笑)
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2004年03月28日

生物兵器を扱ったSF

いや、テレビで天然痘ウイルスが生物兵器として使われたらってやってまして。
鳥インフルエンザやらBSEやらで、ああ、伝染病ってなやっぱり怖いんだなってな発想で、「こりゃタイムリーだぞ」ってな具合でやってるんでしょうな。
で、アメリカもロシアも天然痘ウイルスを処分していないわけですから、こりゃ現実的だぞ、へへいへい、と。

生物兵器によるテロだと、ティプトリーの作品「エイン博士最後の飛行」を思い浮かべるわけですが。
最近読んだものだと、グレッグ・イーガンの「道徳的ウイルス学者」ってのがありましたな。
どちらも素晴らしい出来の短編なのですが、ティプトリーとイーガンの二人をもってしても現実と食い違っている点は、上記2作品は単独犯による犯行なのに対して、現実に懸念されているのは、国家もかかわった犯行であるってところでしょうか。
大規模なテロを書きそうな作家というと、ブルース・スターリングが浮かんできます。というか、スターリングなら書いてくれるんじゃないかと。
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2004年01月27日

日本語

最近、某コミックを読んでいるのですが
いや、結構面白いんですよ?
でもねえ、言葉の乱れというか…

犯人が自白する、とてもシリアスな場面で犯人が一言

どーしようもなくあの人を愛してしまっていたんですもの!」

とか

「あのときはしょーがなかったんだ!

とか
シリアスな場面なんだから「どうしようもなく」「しょうがなかった」くらいにしておかんか?
それともあれか? これが歳をとったということなのか?
確かにガンダム世代だが、それが何か?
何だ、君はガンダムに喧嘩を売るつもりか?
やめとけ。向こうはモビルスーツだ。かないっこないって。
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2004年01月10日

銀牙

先日、買取に行ったときに、あれがあったんですよ。コンビニで安く売ってる廉価版のコミック。通称コンビニコミック。

流れ星・銀って、昔ありましたな。銀牙ってやつ。犬が徒党を組んで熊を倒そうとする、犬なのに格闘漫画っていうやつ。アニメかもされましたし、続編の銀牙伝説WEEDってのも今連載してますな。

で、コンビニコミックの中に銀牙もあったんですよ。
まあ、銀牙が名作であることは、疑いの余地がありません。
高橋よしひろ先生も、巨匠といっていいんじゃないでしょうか。
しかしですね。
表紙のこのキャッチコピー

闘犬コミックの頂点!!

というのはいかがなものでしょうか?

てか、闘犬コミックなんてこの人以外に誰か書いているんですか?
posted by 旅烏 at 20:12 | TrackBack(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2003年06月04日

平仮名?

つうわけで、今日も今日とて出張買取に行ってきたわけでありますが。
実は、一昨日から滋賀県の店から京都市内の店に配属が変わりまして。いやはや、京都はやはり道が狭い。

社用車をこすったのがどうかばれませんようにと願いながら、「ふたりエッチ」やら「ダービージョッキー」やら、新古書店的にはありがたい商品を買ってまいりました。

で、それらのありがたい商品をほとんど読んだことがない私は、いかがなものだろうか。
コミックは読んでいないわけじゃないんですがね。確かに、「エンブリヲンロード」やら「なつのロケット」やら、重点商品にはならんわなあ。
つーか、やまむらはじめもあさりよしとおも、ついぞ店頭じゃ見かけねえや。
ついでにわかつきめぐみも見かけねえぞ。名前が平仮名なせいか?
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2003年02月17日

文庫本ベスト10

本屋にて、本の雑誌社刊のムック「おすすめ文庫王国2002年度版」を買ってまいりました。
「本の雑誌」自体、学生の頃から読み続けている好きな雑誌です。本を楽しもうという精神に満ちていると申しましょうか。読書と言うのは決して学問ではなくて、むしろ道楽であることがわかると申しましょうか。
ま、読む人が読めば学問書だってエキサイティングで面白いんですが。
閑話休題。
そのムックの中で、「本の雑誌が選ぶ文庫ベスト10」なる企画がありました。

一冊も持っていない自分に乾杯。

更に巻末には、ジュンク堂書店池袋店調べの、「年間文庫売り上げベスト365」なる、眺めて楽しい好企画も。

一冊も持って(略)
posted by 旅烏 at 03:39 | TrackBack(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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